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早川 学氏

Profile

千葉県出身。2010年、宮崎大学医学部卒業、宮崎大学医学部附属病院で初期研修後、研修先で地域医療の実態を知り、幅の広い医療人となることを目指して、串間市民病院と県立日南病院で地域医療に携わる。南那珂地域をフィールドに、臨床現場で後進の指導にあたっている。研修医と世代も近いことから屋根瓦式指導を実施し、朝な夕なの研修医との勉強会の主催と、メンタルケアのできる指導医として活動している。

初期研修病院の選び方

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宮崎大学医学部附属病院での初期研修では、少なくとも1カ月は必ず「地域医療」の枠の病院で研修をすることが決められているのですが、いくつか候補が限られてまして、研修医の上の先生たちの評判が良かったのが、串間市民病院でした。

消化器内科の先生方の指導もしっかりしていて、内視鏡など、大学では体験が難しい手技を教えていただけるとか、超音波のエコー検査とか、コモンディジーズから重症な患者さんまで経験ができるよというのが伝わってきていましたので、ローテーション先として選びました。自由選択の1カ月枠もくっつけて、2カ月間のカリキュラムを組んだのですが、「こういう世界があるのか」と刺激を受けたのが地域医療に携わるきっかけになりました。

串間市民病院では、よくある疾患からたまに来る重症患者さんまで、きちんと対応できるようになりたいなという思いがありました。また、アルコール中毒者や生活保護受給者など、大学ではあまり見ることのない患者さんに接して、これが世の中の現実なんだろうなという風に感じたんですね。まずは世の中の現実にしっかり対応できるような医師になりたいと思いました。

じゃあどうするかと考えていたときに、2年間の初期研修を終えるタイミングで、地域医療学講座ができたんです。その時にいろいろな先生方に相談する中で、松田先生(串間市民病医院)との出会いがあり、串間市民病院の黒木院長の後押しもあり、講座の所属になって、後期研修を串間でやってみようと決めました。

早川先生2

どこか医局に入って専門的なことを学ぶとなると、幅広い分野を学ぶのは難しくなるのかなと漠然と思っていたんですね。もともと自分の持っていた医師のイメージが、町医者的な、来る者拒まずというものでしたから、例えば脳外科のスペシャリストになりたいというよりも、自分の持っている医師のイメージを追求していくという過程だったんだと思います。

それに加えて、へき地に一人で行っても対応できる医師になりたいと思っていました。あまり経験を積んでいないうちにへき地に行っても対応できないので、串間ならそのトレーニングができるだろうと、研修先に選びました。

いざ、地域医療の現場へ

串間市民病院は、本当にいろんな患者さんが来る病院で、かかりつけの側面も持ちながら、開業医の先生からの紹介で来る患者さんもいるという、中間的な位置付けの病院でした。そういう意味ではどちらの立場も学べる良い環境だったのかなと今振り返って思います。

本当にあるのかと思ったのが、自転車をこいでいて馬とぶつかった人とか、当直していたら、狸を連れてきて、「こいつに噛まれたんだけど毒があるか調べてくれ」と入ってきた人とか、びっくりするようなことがたまに。そんな経験は串間でないと、できないでしょうね(笑)。

県立日南病院での取組み

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週に2日は外来を担当し、同じく内視鏡検査が2日、2週間に1度は、串間市民病院で実習の指導に当たっています。教育面では、初期研修医の先生方と、5~6年生の医学生を見ています。

急性期を中心に重症患者さんを受け入れるというのが中核病院の役割なのでしょうが、日南の場合は、県立病院であっても初診の患者さんを診ることが多いです。基幹病院としての役割と、地域に根差した活動もしている病院ですね。状態の落ち着いた患者さんを開業医の先生方にフォローしていただいたり、重症の患者さんを紹介いただいたりという役割分担はできています。学生の実習で顔を合わせる機会もあり、開業医の先生方とは、良い関係を築けているのではないかなと感じています。

この地域では、検診の受診率が悪いとか、具合が悪くなってから受診したら病気がかなり進行している患者さんが多いという問題もありますが、日南市は地域医療対策室を中心にかなり熱心ですので、これから改善されていくと思います。

いわゆる家庭医とか在宅医というものも目の当たりにしたことがなかったのですが、今回、吉村先生というプロ中のプロがいらっしゃったので、そういった面も勉強していきたいと思っています。一方で、重症患者に対応した高度医療の手技も身につけて、講座の中でオールマイティな医師になっていきたいと思っています。

多職種連携のカンファレンスというのも、今まで触れたことがない文化でしたので、飛松先生(百瀬病院)に教わって、看護師さんや薬剤師さん、言語聴覚士さんたちと研修医も交えたカンファレンスを自分で手探りながらでも立ち上げたところです。今まで宮崎にはその文化がなかったので、それを根付かせるのが目標です。

県立日南病院での研修について

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この病院の特徴としては、軽症な方から重症な方まで、幅の広さといろんな経験を多彩にできるのが魅力だと思います。ある程度、重症の患者さんが運ばれてきたり、他に大きな医療機関がないので、施設に入所されている患者さんが具合が悪くなって入院されることも多々ありますね。社会背景や家庭環境に問題がある方もいらっしゃるということを考えると、疾患だけではなく、患者さんや家族の問題を解決するノウハウも学べます。

研修医の先生方には、まずは社会人として、挨拶をするとか遅刻をしないとか時間を守るといった基本を身につけてほしいです。その上で当然、医学の勉強と、各コメディカルスタッフと連携しながら、上級医や専門家の意見を聞いて、患者さんの問題を解決していくというスタイルを身につけてほしいと思います。

ここでは、病棟からの電話はまず研修医の先生にかかってきますし、患者さんにトラブルがあったときも研修医の先生が呼ばれます。もちろん全てに対応することは無理でしょうが、まずは研修医の先生にファーストタッチをしてもらい、上級医やコメディカルスタッフに相談して方針を決めていくというスタンスをとっています。自分で決めなければいけないし、夜中でも電話がかかってくるのは、研修医にとってはきついかもしれないですが、それが医師の仕事だと理解して、全て患者さんのためだと思って研修生活を過ごしてほしいですね。

地域医療の未来

今後、難しい病気や手術は大きな専門病院に集約されるのかもしれませんが、高齢化が進めば進むほど、地域医療が主軸になっていきます。患者さんを中心にその地域を丸ごと診るのが地域医療であり、それは専門のトレーニングを受けないと対応するのが難しいので、新しい専門医制度における総合診療専門医もその辺りを見据えてのことではないかなと思います。

地域医療を専門にする医師が、日本の医療の中心となったときに、自分は地域医療の専門家なんだと胸を張って言えるようになりたいですね。

高齢化が進み、地域医療を専門にする医師が日本の医療の中心となっていきます。

最後に先生にとっての医療とは?

患者さんのために悩み続けること 宮崎大学医学部地域医療・総合診療医学講座 助教 宮崎県立日南病院 内科 早川 学氏

宮崎県地域医療支援機構(事務局:宮崎県医療薬務課)
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