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横田 晃氏

急性期から慢性期まで一貫した地域完結型の医療を提供するため、また、高齢化社会への対応のため、福祉施設やリハビリ施設と連携したケアミックス型の病院へと生まれ変わる。地域医療のもうひとつのテーマである、医療やスタッフの疲弊を防ぎ働きやすい環境をどう作るか。宮崎県看護協会の支援を受け、ワーク・ライフ・バランスにも積極的に取り組んでいる。今年74歳になる院長の病院再建への挑戦の物語。

地域医療の実情を知る
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「日向病院には6年前に赴任してきたのですが、当時は、医療過疎や集約的医療という言葉が盛んに叫ばれていました。ここに来る前は、県北に救急を診れる病院があるのなら、何も日向病院が急性期の医療に血道を上げる必要はないのではないかと考えていたんです。ところが、来てみると、住民にとっては、ここに病院があることの安心感というものが非常に大切なものだということを感じたんですね。机上の計画が実情とはかけ離れているということと、地域の住民が安心して生活する基盤には病院の存在が大きいと改めて気が付きました。」

日向病院の理念として、「地域に在る病院」というコンセプトはあるが、本当に地域のためになっているのだろうかという葛藤もある。
「救急も全部引き受けられれば良いのですが、医師不足が理由で断らざるを得ない状況もあります。その医師不足を解消するのが、責任者としての仕事だろうと分かっていながら、なかなか上手くいかない。済生会は生活困窮者への医療というのが役割ではありますが、それ以前に病院として機能しなければなりません。」

医師不足の解消に奔走す
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メディカルサーファーと銘打って、若手スタッフの募集を始めたところ、サーフィン好きのコメディカルが県外から移住してきた。病院内にサーフボード置き場を設置、勤務の制約をなくして、仕事前や仕事終わりに、休みの日や週末に、自然の中で癒されて戻ってくるスタッフの笑顔で、病院が活気で溢れるようになった。

「自由な生活スタイルを確立できるよう、時間にも余裕を持たせた勤務体系で、病院に勤めていただくという方針をとっています。週3日しか働けない人も、2人集まれば、1人分になるわけですから。」

もう一つの方策として、ベテラン医師のセカンドライフとしての勤務を推奨した。

「定年退職した医師なら、ある程度、望みはあるのではと思って、長年呼びかけてきました。しかし、実際動くとなると、親の介護もあるし、単身赴任になると奥さんが不満を訴えたりということもあり、難しい決断だったろうと思います。それでも今は、熊本大学時代の同級生が3人、1人は非常勤ですが、ここに勤務してくれています。みんな70歳を超えてはいますけれど、非常に助かっていますね。」

医師は17名だが、コメディカルを合わせて300名近くが勤務している。
地域医療に医療資源が回るためには、もっと人材の流動化が進んでもよいと考えている。

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「私が医者になったのは、もう50年も前のことなので、今よりも随分とおおらかな時代でしたが、医者というのは、基本的に自由業というのが私の考えで、自分の意思で、海外でも田舎でも住みたいところに住んで、飯が食える職業であると思えれば、もっと気楽に来てもらえるかもしれません。若い方々でもベテランでも自分の生活環境に合わせて、ライフスタイルを考慮しながら勤められる病院という選択肢があってもいいのではないかと思っています。」

地域医療は、融通の利きやすさと、自由で明るい雰囲気が魅力でもある。
「なにも一生同じ場所に居なくてもいいんです。1年でも2年でも、長い医師人生の中の通過地点として、これまでと違った視点を持ちたいという気持ちだったり、気分転換に田舎の病院で働きたいというささやかな希望でも受入れています。私もいろいろな地域を回ったけれど、自然の美しさや人情の厚さ、こんなに気持ちが優しくなるところは、他にはありませんでした。病院のスタッフにしても、患者さんにしても、みんな穏やかに過ごしています。一度気張らずに来てもらって、気に入れば長く居てもいいですし、他所に修行に行って、いずれ帰ってくる場所として考えてもらうのも良いですね。」

人材育成と設備の充実に活路あり
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「今の若い医師が求めているのは教育なんですね。どういう環境で仕事をするかも大事なのですが、医師としての力を付けたいという希望がなにより強い。それを地域の病院でどれぐらいバックアップできるか。これは指導者層をどう養成するかに掛かっていて、専門に特化した指導者や技師がいるということが強みになり、若い医師に来てもらう要件にもなっていますね。」

新しい施設では、ケアミックス型の医療とリハビリテーションを中心に設備を一新し、より地域完結型の医療の提供に特化した病院となる。高い技術を持った技師が集まり、福祉施設や他の医療機関との連携を強化している。

「この日向入郷地区というのはですね、海岸沿いは交通の便もよくなりましたが、山に入っていくと奥が深いんです。
椎葉や諸塚など、医師が2、3人の病院や診療所もありますし、このお手伝いや応援もできないだろうかというのを今後の展開として考えています。」

地域との繋がりを大切に
病院外観

自治体も地域住民も本質的に何が必要なのか、病院もどこまで手を差し入れていいのかなど、地域医療の課題は山積みであるが、地域包括ケアセンターや、医療相談窓口などでソーシャルワーカーが患者との繋がりをつくり、病院と連携して、適切な医療の提供ができるよう模索し続けている。

「今は医療者が少ないので、患者さんの家族の支援がないと治療が進まないという面もあります。病院側だけの完全看護ではやっていけない時代ですので、付いていただける家族がいらっしゃれば、患者さんも医療者側も安心して治療に取組むことができます。」

地域住民とのイベント「健康ひろば」では、健康講座と健康相談を年4回のペースで実施している。また、院内ボランティアを広く募集し、外来患者の案内、入院患者の話し相手や食事の配膳、花壇造成や絵画展示など、人と人との触れ合いを大切にした活動を盛んに行っている。

「この地域で病院が必要とされているのは十分にわかっているのですが、それに完全には応えられていないという思いがあります。いつも止まってしまうのはマンパワーの部分です。ここ数年、入院や救急の数は変わらないのですが、外来は増えています。年1人ぐらいずつ医師の数が増えつつありますが、私をはじめ高齢の医師が多く、中堅どころ、若手の医師がいるから維持できているという面もありますので、良い循環が起こせるように、働きやすい環境を整えている最中です。」

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宮崎県内の医療環境はだんだん整ってきている。済生会日向病院で高度医療は出来ないまでも、急性期と慢性期、回復期においては、地域完結型医療の実現を目指している。

「過疎化が進んでいくことに対しての地域住民の不安はあると思います。その想いを汲み取って、済生会の理念にもあるように、ともに生きる病院であり続けたいと思っています。」

安心して暮らせる地域を支える病院。そこで働く人たちの活き活きとした姿と住民の穏やかな笑顔に出会える病院。そして、患者さん・家族・地域の人たちと職員がともに支えあう、地域に根差した病院がここにはある。

最後に先生にとっての医療とは?

地域とともに在る病院 宮崎県済生会 日南病院 院長 横田 晃氏

宮崎県地域医療支援機構(事務局:宮崎県医療薬務課)
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