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片岡 寛章氏

宮崎大学医学部は、将来の医療需要に対応できる医療人の育成に加え、
宮崎県全域にわたる地域医療のバランサーとしての役割、そして、
宮崎医科大学時代からの研究機関の継承という3本柱の再構築に取り組んでいる。
2018年10月より医学部長に就任した片岡寛章氏に話を聞かせていただいた。

宮崎大学医学部は、将来の医療需要に対応できる医療人の育成に加え、宮崎県全域にわたる地域医療のバランサーとしての役割、そして、宮崎医科大学時代からの研究機関の継承という3本柱の再構築に取り組んでいる。
2018年10月より医学部長に就任した片岡寛章氏に話を聞かせていただいた。

プロフィール

かたおか ひろあき/高知県出身

製材所を営む両親のもとに生まれ、けがを治せる外科医を目指して、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)の3期生として入学。卒業後は、がんの転移に苦しむ人を助けたいと、がん細胞のふるまいを規定する組織微小環境に関する研究の道へ。
1989年より2年間、ボストンに留学。2001年より宮崎大学 医学部 医学科 病理学講座腫瘍・再生病態学分野の教授。2018年、医学部長に就任。病理医として教育者として、宮崎大学医学部附属病院の医療の両輪を担う。

■宮崎大学医学部 医学部長
■宮崎大学 医学部 医療人育成支援センター センター長
■宮崎大学 医学部 医学科 病理学講座腫瘍・再生病態学分野 教授

宮崎大学医学部の使命と課題

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宮崎大学は「世界を視野に地域から始めよう」というスローガンのもと、「地域に立脚した大学」を宣言。医学科・看護学科においては「地域の医療と世界の医学に貢献できる人材を育てる」ことを使命としている。

「地域医療への貢献とは、宮崎県内の県南から県北の津々浦々まで、患者さんがどこで生活していても安心してハイレベルな医療を享受できるようにすることにほかなりません。宮崎市周辺に限れば、医師少数区域ということはないのですが、中央部から少し離れると、開業医の先生方の高齢化による廃業や、医師数不足による診療科の縮小や廃止などもあり、県内全てのエリアで十分な医療が提供できているとはまだ言えません。」

2004年度の臨床研修マッチング制度開始後、都市部の病院を希望する研修医も多く、宮崎に残る医師の数が安定しないという窮状もあり、昔ながらの医局からの直接的な派遣は難しくなっている。そこで、宮崎大学では県立病院や医師会病院に指導医を派遣し、地域に根差した臨床の拠点で後進の育成をするという方針に切り替えた。

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都市部と地方での医師数の偏在と診療科の偏りは日本全国共通の問題で、それを解消するための国の制度も始まっている。

「学生を制度に強引に当てはめようとしても上手く進むわけはありませんので、いろいろな制度をうまく利用しつつ、どのように良いシステムを作っていくかが現在の課題となっています。宮崎の現状を考えると、やはり現場で医療に携わってくれる人材の確保は必要です。特に地域枠・地域特別枠の存在は大事だと考えていて、より利用しやすい制度に洗練していくことで、宮崎で育った優秀な学生がそのまま地域で働きながらも、世界的な研究にも携わりつつ、人類の医療の発展のために活躍できる人材として育成することを目標としています。」

宮崎大学医学部の医療人育成支援センターでは、卒前から卒後まで一貫してサポートできる体制を整えている。入学からの6年間、マッチングと医師国家試験、初期研修の2年間、その後の専門医取得や大学院の進学まで含めて、11~12年の教育課程の中で、長期的なキャリア形成プランをしっかりフォローができる仕組みとなっている。

地域医療を支える制度

「自分の可能性に向き合う時間も必要」

「自分の可能性に向き合う時間も必要」

地域枠・地域特別枠は「地域医療を頑張ります」という意欲のある学生への推薦入試制度であるが、卒業後、さまざまな理由により県外で勤務している医師が一定数いる状況である。

「マスコミでは流出という切り口で語られることが多いのですが、そのうち帰ってくるよと言い続けています。若いうちは、一度は外に出てみたいと思うものですし、いつか宮崎に帰ろうという思いを持っている人も少なからずいます。良い師との出会いだったり、結婚したり、子どもができたり、それぞれの人生のタイミングがありますので、だからこそ、大学からは情報をずっと発信し続けて、戻ってくるきっかけになればと思っています。外でいろんなものを吸収して帰ってきてくれる人材というのは貴重ですよね。」

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国は2019年に医療法を改正し、地域枠・地域特別枠出身医師等のキャリア形成プログラムへの参加と、地方自治体、関係医療機関、県医師会等で構成する地域医療対策協議会において医師の派遣調整を行うという仕組みに変わった。

「宮崎大学の場合は、これまでは地域枠と地域特別枠、それぞれ10人ずつの募集でしたが、2020年度からは宮崎県から奨学金が貸与される地域特別枠が15人に増えます。この25人には、まず自らのキャリアを作っていく制度であるということをしっかりと伝えていければと思っています。キャリア形成プログラムは、学生に無理やりサインさせるものではありませんし、その後のキャリアを拘束するものでもありません。自分の進みたい道をどう実現するか、オーダーメイドのキャリアデザインを作っていく中で、宮崎県のために力を貸してほしい、そんな風に学生と話し合いながら、大学と県と医師会で彼らの歩む道を作っていくのが、このプログラムの目的なのです。」

宮崎県地域医療支援機構では、地域枠の第1期生2名を男女1人ずつ、大学分室に配置して、相談サポート体制を整えた。臨床をしながら、年齢の近い先輩として学生の相談相手になり、キャリア形成のロールモデルという役割も担う。

「国が定めたキャリア形成プログラムの期間は原則9年間ですが、途中で中断して大学院に入ったり、専門分野の勉強に海外の病院や研究所に行ったりという武者修行も、指導医の先生たちとの話し合いの中で実施していきたい企画ですね。それぞれ自分の可能性に向き合う時間も必要ですし、宮崎にいるからこそ巡ってくるチャンスもきっとあります。」

宮崎だからできる仕組みづくり

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宮崎では、国が思い描いている制度の理想的な姿を実現できる素地があると語る。

「大学と、自治体と、医師会とでタッグを組むことが成功への鍵だと考えています。全国の中でも、宮崎はこの3者の連携が上手くできている数少ない地域であると感じます。大学病院も県も県全体の医療を考えています。医師会との関係も良好です。宮崎県医師会の河野雅行会長は、私たちが学生だった頃の整形外科の臨床実習の指導医の先生ですし、宮崎市郡医師会の川名隆司会長も、宮崎医科大学の1期生です。大学と医師会とのつながりが強く、今の信頼関係を保ち、3者でしっかりとした仕組みを作って、より利用しやすいプログラムにしたいと考えています。」

臨床研修のレベルは全国のどこでも大きく差があるものではなく、宮崎で臨床研修をスタートさせることがキャリア形成上の不利にはならない。むしろ良い環境で研修生活を送ることのメリットや、キャリア形成プログラムによりハイレベルで先進的な勉強ができる制度や、地域で働きながらでも世界レベルの研究ができるということをプレゼンテーションすることが、未来の人材を集めるためのポイントとなりそうだ。

研修医へのメッセージ

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夢と感謝の気持ちを持った医師になってほしい

夢と感謝の気持ちを持った医師になってほしい

ひとつは、若者らしく夢を持っていただきたいと思っています。地域での夢でも良いですし、世界への夢でもいい。その夢に重さの違いはありませんが、それぞれの夢に届くように背伸びをしてほしい。背伸びをしていれば、背は伸びます。常に上を見て、本当の空の高さを知ることで、さらに夢を描けるようになりますよ。

もうひとつは、皆、一所懸命に受験勉強して医学部に入り、学び、医師国家資格に挑戦する権利を得るわけですが、それが自分だけの権利だとは思ってほしくないと思っています。もちろん頑張った努力の成果ではありますが、周りでずっと支えてきてくれた人たち、家族や地域の人の存在を忘れないでほしい。

医師免許を取得するということ、それはあなたたちの権利であると同時に、大きな義務を背負うことでもあります。国立大学ですので、入学から卒業まで一人一人の学生に費やされる国費も膨大です。臨床実習には地域の皆さんが患者さんとして来てくれて、学生に胸を開け、言いたくないことまで話してくれます。それは全てあなたたちを良い医師として育てるためです。その重さを感じて、周りの人たちに感謝の気持ちを持ち続けてもらえたらと思います。

最後に「宮崎の医療は宮崎大学医学部の卒業生で守ろうじゃないか」というのは、私の夢でもありますが、夢と感謝の気持ちを持った医師になってほしいと心から願っています。

■キャリア形成プログラム
主に地域枠・地域特別枠医師を対象に、地域医療に従事する医師のキャリア形成上の不安解消、医師不足地域・診療科の解消を目的として、都道府県(地域医療支援センター等)が主体となり策定された医師の就業プログラム。

■卒前・卒後一貫した大学・地域循環型教育体制
学生は研修医、専攻医へと成長していく過程で、同じ施設の指導医から成長に応じた指導を縦断的な時間軸で受けることができる。その結果、大学と地域病院が構築するスパイラル型の医師養成環境の中で、若手医師の地域定着の促進が期待される。

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宮崎県地域医療支援機構(事務局:宮崎県医療政策課)
〒880-8501 宮崎県宮崎市橘通東二丁目10番1号 TEL 0985-26-7451
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