宮崎大学医学部に設けられた学校推薦型選抜入試で、地域枠・地域特別枠で入学した医学生は、将来、宮崎県の地域医療を支えていく、まさに「宮崎県民期待の星」である。
今回、地域枠第1号の卒業生でもある宮崎県地域医療支援機構大学分室の黒木純医師と医学生5人に、宮崎大学でのキャンパスライフについて、ざっくばらんに語っていただいた。
森 梨乃氏
2年生/都城市出身都城泉ヶ丘高校卒
Q1. 医師を目指した理由は?
病院で働くことが小さな頃からの夢でした。結構やんちゃだったので、骨折した時にお医者さんの治療を間近で受けているうちに憧れて、私も医師になりたいなと思うようになりました。都会志向でもないし、田舎にいたいし、自分が育ってきた街に貢献したり、今までお世話になってきた人たちに恩返ししたりするなら、都城で医師になろうと宮崎大学を選びました。地域枠は、本当に一般的な推薦入試の感覚で、とにかく使える選択肢は全部使おうって(笑)。
Q2. 将来どんな医師を目指していますか?
子どもが好きで、小児科医になりたいという夢があります。しかも、子どものいる小児科医になるのが理想です。患者さんの保護者と同じ母親としての目線を持った医師として、相談しやすい環境をつくりたいと考えるようになりました。少子化は進んでいるのに小児科医は足りていない現状を打破するために、地元の都城で小児科医が地域の活性化を推進するというモデルケースをつくっていけたらと思っています。
長尾 一徹氏
5年生/日南市出身宮崎西高校卒
Q1. 医師を目指した理由は?
小さい頃は病院やお医者さんが好きじゃなくて、痛いところ、泣くところとしか思ってなかったです。そのまま高校生になったんですけど、大人になるにつれて見え方が変わってくるじゃないですか。学校で医師の講演があったり、先輩の話を聞いたりして、医者の側からの視点を知るようになってみると、職業の選択肢の一つとして、自分に合っているのかなと思うようになりました。宮崎大学に進んだのは、単純に宮崎が好きだったからですね。
Q2. 将来どんな医師を目指していますか?
率直に、泣いてきた患者さんを笑顔で帰せる医者になりたいと思います。ここ1年の医学実習でいろんな診療科を回った経験でいうと、眼科とか耳鼻科とか機能的な部分の診療科が分かりやすくて好きです。救急と地域医療も患者さんと接する機会が多いので、その方面にも進みたいなと考えています。働く場所とか、いつまでにどうなりたいとかは、これからぼちぼち決めていこうかなという感じです。
阿萬 樹生氏
3年生/西都市出身宮崎大宮高校卒
Q1. 医師を目指した理由は?
私が高校2年生の時に、祖父が下肢静脈瘤という病気で入院したんです。担当の先生の手術のおかげで足の切断まではせずに、家族一同、感謝した思い出があって、その時から人の病気を治して患者さんやご家族の力になれるような医師になることを決心しました。そこから本気で医学部進学のことを考え始め、学校の先生に相談したら、地域枠があることを教えてもらいました。もともと地元で働きたいと思っていましたので、自分にはぴったりだなと思っています。
Q2. 将来どんな医師を目指していますか?
将来の目標は「心・技・体」三拍子そろった医者になることです。幼少期に習っていた柔道の教訓そのままなのですが、医師にとって大切な要素だなと。実習で都農町国保病院、市立田野病院、串間市民病院、川南の国立宮崎病院などの病院を回って、アンケート調査をしたことがあったんですけど、医師と患者さんの距離が近くなるんですね。宮崎で地域医療をやっていくには、方言のマスターも技のうちかなと思っています。
末安 諒河氏
1年生/延岡市出身延岡高校卒
Q1. 医師を目指した理由は?
小学生の頃からサッカーをしていたんですけど、高校生の時に腰のけがで病院やリハビリに行くことが多くて、理学療法士や医療の仕事に興味を持ちました。自分がスポーツを挫折した分、他の人を治せたらいいなと思っています。宮崎大学を選んだのは、県外で働きたいという意向も強かったわけではないし、祖母と延岡に住んでいたので、いつでも帰れる距離が良かったというのが理由です。高校の先輩が地域枠で毎年何人か入っていたので、自分も目指しました。
Q2. 将来どんな医師を目指していますか?
医師になろうと思ったきっかけが、けがからの回復だったので、理学療法士の仕事にも興味がありました。医師の方が圧倒的にできることは多いんですけど、理学療法士の方は患者さんとの距離が近いというのが魅力だと思うので、その両方ができるような整形外科医になるのが理想です。宮崎はサッカーチームのキャンプの聖地でもあるので、サッカーに携われるような、スポーツドクターにもなりたいですね。
東 亮太氏
1年生/都城市出身日向学院高校卒
Q1. 医師を目指した理由は?
母が看護師で、もともと医療関係の仕事に就きたいと思っていました。高校生の時に父が心筋梗塞で倒れたことがあって、今は元気なんですけど、それが一番大きなきっかけでした。もう一つは、自分の母校の先輩の講演で、今、県立延岡病院で働いている長嶺育弘先生のお話を聞いて、救急救命医になりたいなと思い始めました。地域枠を選んだのは、宮崎で医師になることが、父親の命を救ってくれたお医者さんへ、少しでも恩返しになればと思ったからです。
Q2. 将来どんな医師を目指していますか?
救急救命医への憧れがあるので、日本救急医学会内の学生・研修医部会(SMAQ)に入って勉強しています。6月に救命学会の地方会が宮崎で主催されるので、それに参加したりしながら、宮崎大学の救急部を目指したいです。まだ1年なので、もしかしたら、今後学んでいくうえで変わることもあるのかもしれませんが、どんな自分になるのかなあと楽しみながら頑張っていこうと思います。
黒木 純氏
宮崎大学医学部附属病院小児科腎臓グループ
宮崎大学医学部附属病院
小児科腎臓グループ
くろぎ じゅん/宮崎県出身。
2006年度、地域枠入試(第1期生)で宮崎大学医学部医学科へ入学。
宮崎大学卒業後、宮崎大学医学部附属病院での2年間の初期研修を経て、宮崎大学医学部小児科に入局。
その後、県立宮崎病院、県立日南病院、都城市郡医師会病院等の二次医療機関での一般小児診療を経て、2019年より宮崎大学小児科腎臓グループに所属し、専門医を目指している。
宮崎県地域医療支援機構大学分室の専任医師として、地域枠・地域特別枠入学生、地域貢献枠(医師修学資金貸与)学生のキャリア支援を行っている。
■資格:小児科専門医
■所属学会:日本小児科学会、日本腎臓学会、日本小児腎臓病学会、日本小児腎不全学会、日本小児泌尿器科学会
医師になると、患者さんの治療や生活指導をする立場になるのですが、実際の患者さんは、いろいろなコミュニティ・職種の方もいて、考え方も生き方も様々です。説明を受けて理解するのが困難な患者さんや病気で自棄になっている患者さんもいます。そういう患者さんとコミュニケーションをとるのに、例えば、趣味の話で距離を縮めるとか、地元の話で盛り上がるとか、学生時代の経験が意外と役に立つんですよ。
医学部って、医学への道を一生懸命頑張るのはもちろん良いことだし、そうして欲しいけれど、今の自分の周りは狭い世界なんだって自覚して、学生時代にしかできないことを経験しておくと、将来、絶対に役に立ちます。アルバイトでもいいし、1年間休学して旅に出てもいいし、いろんな人と知り合って、話をして、遊んで、後悔のないようにキャンパスライフを楽しんでくださいね。
黒木: 大学生活ってどんなイメージだったかな?ちなみに僕は、オレンジデイズ(編注:2004年TBS制作のドラマで、妻夫木聡・柴咲コウが主演)みたいなキャンパスライフを想像してた(笑)。
長尾: 医学部はやっぱり普通の大学とは違うよっていうのは、先輩から言われてきたまんまでしたね。
黒木: みんなも予想通り?
阿萬: 入学前は親からも高校の先輩からも、医学部は大変だよって言われていました。一日中講義が入っていて、朝も夜も勉強漬けだって。まあ実際はちょっと違って、そこまでではなかったのですが。
森: 意外と空きコマもあって、みんなそれなりに部活とか好きなことして楽しんでいますよね。
黒木: やっぱり部活の先輩・後輩のつながりが強いかな?みんな部活は何やってるの?
東: 僕はバレー部で、セッターやってます。
森: 私もバレー部です。ライトですね。
末安: サッカーを続けてます。ポジションはディフェンダーかサイドバックかどっちかですね。
長尾: ボート部です。ポジションはないかな…(笑)。
阿萬: 水泳部とアームレスリング部を掛け持ちしてます。都農町のワイナリーで大会もあるんですよ。
黒木: 全員部活やってるんだね!どんな授業が面白い?一般教養以外の医学部っぽい授業があると、やっと医学部に来たって感じがして、面白かったし、解剖の授業はめちゃくちゃ勉強してた記憶があるね。
長尾: 時々、教授について臨床に出ると、今になって3年生の時の授業がめっちゃ面白いんですよ。学んだことを臨床で再び味わえるので。
黒木: 臨床の講義って、実際に臨床現場に出る前に話だけ聞くから全然イメージ湧かないけど、実際にポリクリとかクリクラとか回ってから受けるとめちゃくちゃ面白いし、ああ、この先生、良いこと言ってくれてたんだなってわかるんだよね。2年生はどんなことやってるの?
森: 生理学とか寄生虫学とかですね。ちょこちょこ症例を使った講義があって、興味ありますね。
黒木: 地域枠や地域特別枠で、他の一般入学者と比べて違いを感じることってある?
東: 学校での授業やスケジュール面での差は何もないんですけど、1、2年時には地域枠・地域特別枠の学生だけが受ける特別講義や実習があって、早くから地域医療に触れられるというのは、入学前から聞いていました。
末安: 受験前に面接対策とかで、宮崎の医療のことを調べたり聞いたりして、詳しくなっていたつもりだったけど、特別講義で初めて知ることも多くて、地域医療に関しては、他の大学より熱が入っているなって思います。
阿萬: 地域枠の特別講義では、コミュニケーションの大切さとか基本的なことを学べるし、今年はコロナで開催されなかったですけど、夏に地域医療ガイダンスという、グループごとに市立田野病院や県内の病院で2泊3日の合宿をする形式の実習もあるんですよ。
森: 地域医療ガイダンスって、他の一般枠で入った子たちに話すと、すごくうらやましがられるぐらいすごく良い経験ができるので、それは地域枠の良さだなと感じます。受験の時に、推薦で入学すると一般で入った人たちよりも苦労するよって言われたんですけど、大学に入ってしまえば、そこから自分がやるかやらないかだけですし、阿萬先輩みたいに、枠に関係なく医学部全体のリーダー的な存在になっている人もいますよね。
阿萬: 3年生になると、特別講義はなくなるんですけど、地域枠・地域特別枠の各学年の人が集まる代表会議ができたので、そこで顔を合わせることはありますね。
長尾: でも実際はそれぐらいで、あまり地域枠だからといって、集まって飲んだり、宮崎について語ったりすることはないんですよね。まあ、コロナもあったので飲み会自体が開けないんですけど。
黒木: コロナが収まれば、もっと飲み会もできるだろうし、これからのキャンパスライフも楽しんでね!