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県立日南病院

プロファイル

宮崎県立日南病院 病院長

原 誠一郎氏(はら せいいちろう)

日南市出身、県立日南高校卒業。1988年に宮崎医科大学を卒業後は、同大学第一内科入局。県立日南病院にて2年間の初期研修。1998年、宮崎医科大学大学院修了、医学博士。宮崎大学血液浄化療法部の講師、副部長を経て、2008年4月より県立日南病院副院長。同年より宮崎大学医学部客員教授を務め、現在は臨床教授。腎臓内科、生活習慣病、透析治療を専門とする。2023年4月に院長に就任。

【認定等】日本内科学会認定内科医、指導医/日本腎臓学会専門医、指導医/日本腎臓学会学術評議員/日本透析学会専門医、指導医/臨床研修指導医

宮崎県立日南病院 副院長
兼 医療管理部・医療連携科 部長
患者支援センター長

木佐貫 篤氏(きさぬき あつし)

1987年、宮崎医科大学卒業。同大学大学院(細胞器官系)を修了。県立宮崎病院の臨床検査科、宮崎医科大学第一病理を経て、2000年より宮崎県立日南病院の臨床検査科に入職。2003年からは医療連携の実務者として、日南病院と地域開業医との連携や、地域の医療従事者全体を対象とした研修会、医療連携の実務者間の交流会など様々な取り組みを行っている。

【認定等】日本病理学会専門医/日本臨床細胞学会専門医/インフェクションコントロールドクター(ICD)/日本クリニカルパス学会パス指導者

宮崎県立日南病院 副院長
兼 外科主任部長
卒後臨床研修プログラム責任者

市成 秀樹氏(いちなり ひでき)

1987年、宮崎医科大学卒業。第二外科に入局し、同大大学院にて医学博士号を取得。2000年より県立日南病院外科に入職し、呼吸器外科、乳腺外科を中心に一般内科まで幅広い臨床と専門的な研究を両立させている。現在は、卒後臨床研修プログラムの責任者および、宮崎大学からの外科専門研修プログラムの専攻医の受け入れなど、後進の指導に情熱を捧げている。

【認定等】日本外科学会指導医/日本胸部外科学会認定医/日本呼吸器内視鏡学会指導医

原院長のコンセプト

アメリカに、看護師の離職率が低い病院を意味する「マグネットホスピタル」という言葉があるそうです。シアトルのある病院が経営危機に陥ったのですが、看護師の方々にとって働きやすい環境にすることで離職率が下がり、患者さんも集まって、病院の経営までも改善されたという話です。

 看護師だけでなく、私たち医師の働き方改革も含め、全ての職員にとって、居心地の良い、働きやすい病院を目指しています。職員の仕事中の表情が明るくなれば、外来や入院患者さんたちの居心地も良くなるでしょうし、付き添いのご家族も「調子が悪くなったら、この病院にお世話になろうかな」と思っていただけるかもしれません。地域の住民や医療機関からの信頼を得た結果として、患者さんが増え、病棟の稼働率があがり、経営面にも良い影響が出るのが、理想的な病院経営だと考えています。

原院長の近影

 病院内はいろいろな職種の人が働いていますが、看護師が最も多い人数を占めますので、その満足度を高めれば、何事も好転しそうなイメージは持っていました。院長を拝命するにあたり、職員も患者さんも全員を惹きつけられるような魅力を備えた病院という意味で使わせていただければと思い、この「マグネットホスピタル」という言葉をキャッチコピーに据えて、磁石のように人々がお互いに繋がる病院を目指しています。

【※注】アメリカの認証制度としての「マグネットホスピタル認証(Magnet Recognition®)」は、米国看護師認証センター(ANCC)が、看護の卓越性および質の高い患者ケアを提供している医療機関を認証する制度で、2019年11月に聖路加国際病院が日本初のマグネットホスピタル認証を取得している。

県立日南病院の特長

 病院の基本理念は、「患者さん本位の病院」「高度で良質な医療」「地域社会への貢献」の3本柱です。医師は40名弱で、看護師が250名、コメディカルを含めても、常勤スタッフが350名程度のスモールパッケージな病院ですが、小規模だからこそ、看護師さんや検査技師さんまでお互いの顔と名前が分かっていて、風通しが良いです。全ての診療科の医局がワンフロアに集約されているので、診療科の垣根を越えて、お互いの患者さんの相談が気軽にできるのも良いところだと思います。
 患者さんにとっても、敷居が低い病院になることを目指しています。患者支援センターの木佐貫先生を中心に、地域の開業医の先生方とも顔が見える良い関係を築いているため、かかりつけ医から各診療科の専門医への連携もスムーズです。

木佐貫副院長の近影

木佐貫 二次医療圏の中核病院でありながら、地域住民の方々には、地域密着のイメージを持っていただけていると思います。患者さんの9割近くが日南市と串間市在住の方で、南那珂地域全体の医療・保健を担いつつ、高次医療まで地域完結型医療を提供しています。このエリアの最後の砦であるという自負と矜持を持って診療にあたっている医師が多いのも、当院の強みです。昔は、宮崎市や都城市まで搬送するのが大変だったので、70代以上の方たちは、「県立日南病院でだめだったら、諦めるしかない」くらいの感覚だったようです。だからこそ、地域住民の皆さんの信頼に応えられる仕組みを作っておかないと、この病院の存在価値がなくなってしまいます。

市成 地域完結型医療を提供する病院として、この地域になくてはならないという使命感を感じています。脳神経外科や循環器内科のカテーテル手術、産婦人科の分娩、小児科の入院施設など、複数の高度医療機能を持っているのは、日南・串間医療圏では当院だけですので、確立された医療体制を維持していく必要があります。
 ドクターヘリのおかげで、短時間で患者を搬送できるようになった今、患者さんを適切に大学病院等へ紹介することも、我々の新たな責務となっています。

働き方改革への取り組み

 現在働き方改革の基準とされているのは労働時間で、月間や年間で上限時間を超えないようにということですが、実際のところ、それだけでは何の解決にもなりません。まずは、勤務時間が長くなる理由を追求する必要があります。
 例えば、患者さんやご家族への病状説明および治療方針の話し合い等は、勤務時間内に行うのが原則ですが、実際は勤務時間内では患者さんの都合がつかず、主治医が時間外勤務にならざるを得ないというケースも少なくありません。また、外科においては、木曜日・金曜日に手術をすると、予後が気になって、本来休みであるはずの週末に回診される先生も少なからずいらっしゃいます。患者さんやご家族に、毎日来てくれる良い先生だと思っていただけるのはありがたいことです。しかし、プライベートを犠牲にした時間外勤務が増えてしまうことや、土日に対応できない先生方にプレッシャーを与えることにならないか懸念しています。
 夜間や土日は輪番制にするといったタスクシェアリングや、医師事務作業補助者の雇用を増やすことで、少しずつ医師への事務的な負担を分散するタスクシフティングも始めています。私たち経営側が音頭を取り、各々の担当業務が勤務時間内に収まるようにしなければいけないですよね。

市成 外科手術は長時間になりがちですし、術後の管理まで考慮すると、1日をどういう体制で組めばいいのか、正直悩ましいところです。一方で、患者さんやご家族の意識も少しずつ変わってきていて、「お医者さんにも勤務時間はありますよね。」と理解のある方も増えてきています。
 それに甘えるわけではないのですが、先生方には、自分が主治医だから土日も診るという考え方ではなく、当番の先生を信じてお任せする考えを大切にしてほしいです。もちろん、患者さんの状態を心配する気持ちはわかるので、病院に来なくても細かく連絡を取り合えるようなチーム医療体制の整備を進めています。
 患者さんを不安にさせないのが一番大事なことですので、そのためのチーム医療なのだという意識を全員に浸透させていけば、業務時間だけでなく、心理的な負担も軽減できるのではと考えています。
 原院長のマグネットホスピタルのお話の通り、看護師やコメディカルの方々が勤務しやすい環境にしていくことも大切です。育児中の時短勤務の制度もありますし、時間外の検査が発生しがちな技師さんも、オートメーションの検査機器などで省力化できれば、全員がフルタイムで働く必要はなくなります。「長時間」働くのではなく、「長期間」働ける環境にするのが、働き方改革ではないかと考えています。

市成副院長の近影
地域の医療ニーズに応えるには

 当院は、ほぼ全ての診療科を宮崎大学医学部附属病院の医局からの派遣医師で賄っています。年に数回、当院の需要をお伝えしつつ、医局の供給能力を教えていただき、派遣人数や常勤・非常勤の調整などについては、日頃から絶えず医局とコンタクトを取っています。

木佐貫 どの領域もニーズは高いのですが、高齢者を取り巻く医療のニーズは特に高いです。
 心筋梗塞や脳梗塞などの急性期疾患は、南那珂地域だと当院しか対応できないため、患者さんが集中しています。治療した後の回復期は、リハビリや療養を担う病院、在宅医療の開業医の先生方にお願いしていたのですが、閉院が続いたことで、対応していただける医療機関が少なくなっているので、退院までの期間をそのまま当院で過ごす患者さんも増えてきました。地域医療は、地域全体の医療資源があってこそ成り立つものですので、だんだん機能分担が難しくなっていると感じています。
 日南市は自治体としては珍しく、地域医療対策室という医療の専門部署を持っていて、日南市立中部病院とは二人三脚の医療連携ができています。高校生向けのメディカルサイエンスユースカレッジという病院見学も長年続けており、看護師やセラピストとして地域の病院に就職する卒業生も少しずつ出てきました。長い目で見れば、人材確保に繋がっています。
 日南塾やにちなん医療市民サポーターズという市民活動も盛んですし、在宅医療の勉強会である日南在宅ケア研究会もこれまでに300回を超えています。行政、医療者、訪問看護、ケアマネージャーなど多職種が集まる顔の見えるコミュニケーションや、インターネットを活用した情報の共有は、地域医療にとってとても重要です。日南市医療介護情報共有システムNet4Uを介して、県立病院の認定看護師が、ストーマや褥瘡の処置について訪問看護師にオンラインでアドバイスしたり、受診の相談に乗れたりと、診療の質の向上にもつながっています。
 このような取り組みを丁寧に積み重ねてきた結果、日南市の地域包括ケアは、全国的にも評価されるようになりました。
 医療資源が乏しいなどのマイナスファクターはありますし、みんながハッピーに地域包括ケアができているかというと、まだまだ課題もありますが、それでも10年前に比べれば、かなり前進していると思います。

地域医療の医師育成に貢献したい
原院長、市成副院長、木佐貫副院長の近影

 10年前、宮崎大学に県の寄付講座として地域医療学講座ができ、当院を舞台に地域総合医育成サテライトセンターが設立されました。現在県立延岡病院に勤務されている松田先生を筆頭に、地域で総合医を育てるというコンセプトの専門医プログラムでした。
 当初は卒後臨床研修プログラムの自由度も高く、初期研修の段階から、地域に出て総合内科を学べる、離島にも行けるということで地域医療志向の研修医が来ていたのですが、だんだんと必修のローテーションの割合が増えて、オリジナリティがなくなってしまいました。とはいえ、10年間で基幹型臨床研修医だけでも総勢45人の研修医をお世話することができましたし、病院の戦力として大いに活躍していただきました。
 臨床能力をアップさせることに特化していましたので、研修医が毎年受けている基本的臨床能力評価試験では、1年目はそこそこの成績であっても、2年間終わる頃になると成績が非常に伸びるという成果も出ていました。2018年には全国で5本の指に入り、シンポジウム等に呼ばれて発表したこともあるほどでした。
 地域医療学講座の先生方を中心に、当院で働く看護師や検査技師、その他のコメディカルスタッフの方々もレクチャー講師として、朝早くから研修医指導に取り組んでいただきました。卒業生の中には、育ててもらった恩返しだといって、月に一回ほどのペースで勉強会を開催し、後進の指導にあたってくれている先生方もいます。以前と比べるとパワーダウンはしていますが、今後も臨床研修には力を入れていきます。

市成 診療科の垣根がないというのは、当院の取り柄です。外科では、協力型として大学からの専門研修医も受け入れていて、大学では診ないような一般的な症例が経験できる貴重な機会となっています。卒後臨床研修も、原院長たちが築いたシステムを踏襲する形で、若い先生方が幅広く学べるようにしたいと思っています。
 当院の研修医の中には「この病院で生まれました」という先生方もいます。原院長も日南出身で、ずっと日南にいらっしゃいますが、患者さんの中には祖父母も親戚も、最期は県病院で過ごせれば本望だという話をされる方々もいらっしゃいます。

木佐貫 指導医も増やしていきたいですね。卒後7年目ぐらいから指導医講習会を受けられますが、それぞれのキャリアにおいて、臨床を一生懸命やりたい時期や、専門医資格を取り立てで、これから頑張っていこうという時期でもあると思うので、指導医の研修を受けるのは少し敷居が高いのかもしれません。
 私は指導医講習会のファシリテーターを7、8年間務めましたが、そこで学んだグループワークなどの手法はとても勉強になりましたし、地域包括ケアや医療と介護の連携面などで、今でも役に立っています。

 昨年、市成先生には、卒後臨床研修を管理するためのプログラム責任者のライセンスを取っていただいたので、研修の指導も一段と上質なものになると思います。また、中堅の先生方が指導医研修を受けることで、多彩な視点や多方面との繋がりを持てるので、今推進しているチーム医療にとっても、先々の医師としてのキャリアにとっても、大切なものになります。
 結局のところ、地域の中核病院としての矜持をどのように保ち、いかに地域住民からの信頼を勝ち得るかですよね。大学医局から交代で派遣される先生方は、長期的なコミュニケーションにおいて難しい面があるかもしれません。その部分は、地元出身で当院に長く勤められている先生方が連携してコミュニケーションをとっていかなければと考えています。人が入れ替わっても一定の水準を維持できる仕組みを作りながら、ずっと地域に居てくれる人を育てていくことが課題ですね。

研修医へのメッセージ
原院長の近影

 研修医の受け入れ枠も多くないので、寺小屋みたいに手取り足取り教えることができる研修体制になっています。幅広い年齢層のあらゆる症例があり、初診の鑑別から最期の看取りまで経験することができますので、研修のスタートの場としては良い規模感だと思います。
 プロ野球の広島東洋カープと埼玉西武ライオンズは、ここ日南市で1カ月間春のキャンプを行い、1年間のペナントレースを戦う基礎体力を培っています。研修医の皆さんも医師の一生の土台作りとして、県立日南病院で2年間を過ごしてみませんか。

原 誠一郎氏

 現在の卒後臨床研修プログラムの2年間は、私たちの時代のように卒業後すぐに医局に所属するシステムではなく、多くの指導医と出会い、同級生たちとも切磋琢磨する期間が与えられています。
 当院は主要な診療科が揃っており、かつ診療科同士の垣根が低いです。その上、大学からの派遣医師が多いためキャリア相談もしやすく、レベルアップ可能な環境が整っています。じっくり時間をかけて自分に合った専門を決めるのも良いでしょうし、日南はマリンスポーツも盛んですので、新たな趣味を見つけて両立を楽しむのも良いかもしれません。ぜひ県立日南病院へ研修に来ていただければと思います。

市成 秀樹氏

市成副院長の近影
木佐貫副院長の近影

 県立日南病院は地域の急性期を担う病院ではありますが、地域の医療機関や介護施設のみなさんとともに南那珂地域の医療を支えています。医療技術や専門性の高さはもちろんですが、実は医師に最も求められるのは、地域のいろいろなプレイヤーとのコミュニケーション能力です。それぞれの職種を理解し、リスペクトする資質がある人こそが、活躍できる場所だと思います。
 自分の専門性を高めながら、視野を広く持ってほしいです。医療と介護の枠を超えたいろんな業種の方々と接点を持つことで、医療人としての立ち位置や立居振舞いも学んでほしいと思っています。

木佐貫 篤氏

宮崎県立日南病院

所在地〒887-0013 宮崎県日南市木山 1-9-5
電話0987-23-3111
URLhttps://www.nichinan-kenbyo.jp/
病床数281床(一般277床、感染症4床)
診療科目内科、循環器内科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、脳神経内科、麻酔科、精神科、心療内科、臨床検査科、病理診断科、歯科口腔外科
※精神科、心療内科は休診中
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宮崎県地域医療支援機構(事務局:宮崎県医療政策課)
〒880-8501 宮崎県宮崎市橘通東二丁目10番1号 TEL 0985-26-7451
ishishohei@pref.miyazaki.lg.jp