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和田病院

人口減少や高齢化などの社会情勢を背景に、若い世代の職業意識の変化に加え、医療ニーズも多様化していることから、医療従事者の確保と人材育成は困難を極めている。2014年10月に勤務環境改善に関する改正医療法が施行され、医療機関がPDCAサイクルを活用して計画的に医療従事者の勤務環境改善に取り組む仕組みとして「勤務環境改善マネジメントシステム」が創設された。
これに呼応して、宮崎県では2015年に医療勤務環境改善支援センターを設置し、モデル病院を募集。すでに、事業所内保育所の設置やメンタルヘルス対策など、ワーク・ライフ・バランスに取り組んでいた和田病院がこれに手を上げ、採択される。看護部を先頭に、有給休暇の取得推進、子育てや介護との両立や、復職支援などの取り組みを展開し、全職種にわたる働き方改革を実践中。そのキーマン3名に、これまでの取り組みと進捗状況を伺った。

プロフィール

荒瀬 浩之 氏
荒瀬 浩之氏
Arase Hiroyuki

川南町出身。理学療法士として、2001年入職。2013年より診療技術部長として、画像診断技術科、栄養管理科、臨床工学科、リハビリ技術科を統括。

黒木 雅代 氏
黒木 雅代氏
Kuroki Masayo

美郷町出身。出産を機に日向市に転居。33年目のベテラン看護師。2009年に看護部長に就任。

井上 和彦 氏
井上 和彦氏
Inoue Kazuhiko

大分県日田市生まれ、宮崎市出身。関東の食品メーカー勤務から日向市にUターン。2008年9月より事務局長として入職。診療情報管理士

荒瀬 浩之 氏

荒瀬 浩之氏
Arase Hiroyuki

川南町出身。理学療法士として、2001年入職。2013年より診療技術部長として、画像診断技術科、栄養管理科、臨床工学科、リハビリ技術科を統括。

黒木 雅代 氏

黒木 雅代氏
Kuroki Masayo

美郷町出身。出産を機に日向市に転居。33年目のベテラン看護師。2009年に看護部長に就任。

井上 和彦 氏

井上 和彦氏
Inoue Kazuhiko

大分県日田市生まれ、宮崎市出身。関東の食品メーカー勤務から日向市にUターン。2008年9月より事務局長として入職。診療情報管理士

働き方改革のきっかけ

荒瀬 浩之 氏、黒木 雅代 氏、井上 和彦 氏

井上

2014年の医療法の改正で、勤務環境改善に取り組まなくてはならないということになり、いろいろな研修に行って勉強させていただいたのですが、難しかったです。まだ他の医療機関で取り組んでいるところも少なく、参考事例もほとんどなかったので、自前でマネジメントシステムを組み立てるまでには至りませんでした。

地域の病院が集まる事務長会でも話題になっていましたので、宮崎県医師会の医療勤務環境改善支援センターに相談して、講師の先生を呼んで日向で講演会を開きました。その先生に進められて、コンサルタントにアドバイスをいただきながら、県のモデル病院として採択され、マネジメントシステムを導入したという経緯ですね。

まずは、全職員へのアンケートから始めました。結果としては、特に緊急の課題はないという先生の分析だったのですが、その中のフリーコメントで記述されていた40項目について取り組もうということになりました。結構辛辣なコメントもありまして、ちょっと落ち込みました(笑)。

荒瀬

技師さんたちからは、「人が足りない」「業務の不公平感がある」などの声が上がっていました。「そもそも地域に人材がいない」といった意見もありました。

黒木

看護師からは、とにかく「時間外勤務の多さ」と、「夜間の長い勤務体制の中で休憩が取れない」という労働時間に関する不満がほとんどでした。あとは、やっと仕事を覚えて一人前になったタイミングで「子育てで離職してしまう」「復職しても夜勤ができない」というライフステージの問題もありますよね。日本看護協会の方でも、ワーク・ライフ・バランスを推進していましたので、看護部から率先して働き方改革に取り組んでいきました。

課題の洗い出し

井上 和彦氏02

井上

病院全体で進めるにあたり委員会を作りました。最初は3グループ5人ずつの15人で、多職種での構成とし、意見を言ってくれそうな方、実際に動けそうな人に打診して、選定しました。

荒瀬

人事労務グループでは、採用活動や離職防止の取り組みを、労務管理グループでは、業務量調査を行って残業問題の対応を、人材育成グループでは、計画的な育成のために新人向けのサポートブックを作成しました。ここ6年間の採用データでは、新卒と中途が半々の割合です。

黒木

労務管理は大切ですが、24時間切れ目なく医療が提供できる体制は維持していかなければなりません。日勤・夜勤の2交代制に限らず、夕方からなら勤務できるとか、夜勤だけならできるという人がいてくれると、うまく回せるかなと思います。あとは、人材不足の解消策として、定年後もベテランナースに仕事を続けてもらいたいのですが、「これまでと同じ仕事はできないのに、私たちをどこで使おうとしているんですか」というアンケートの回答もありました。この再雇用モデルの構築は新たな課題かなと感じています。

荒瀬 浩之 氏02

荒瀬

技師さんたちは日中の検査に加え、夜間救急の対応もありますので、交代で待機しています。ただ、夜間に稼働した後の休みが取りにくいという問題があり、懸念しているところです。リハビリテーション科の場合は、カレンダー通りに休みはとれるのですが、回復期の病棟だけは土日祝日関係なく交代で勤務していますね。若いスタッフが多いので、今のところは回っているのですが、今後結婚や家族が増えてくると、土日の勤務調整が難しくなってくるかなと思っているところです。

井上

当院では、65%以上が脳神経外科の患者さんで、救急の受け入れから術後のリハビリまで一貫して診られるというのが特色です。内科と消化器外科と一般外科もありますが、地域の要望に応える形で急性期を24時間対応するようになったというのが原点でもあります。

PDCAの成果とは?

黒木 雅代 氏02

井上

定期的に職員の満足度調査(やりがい度調査)をしているのですが、ここまでの2年間で、ほとんど変わっていないです。もともと勤務環境の改善に取り組んでいたということもあるので、アンケートでも短期的に片付けられるような問題は抽出されず、なかなか目に見えて変わったことがないので、満足度調査の結果としては出ていないのですが、短期的な分かりやすい目標も立てておくといいのではというコンサルタントからのアドバイスもありました。

黒木

わかりやすいところでいえば、有給休暇の取得率は高いんです。看護部では「リフレッシュ休暇を取りましょう」と年度の初めに5日以上の連休を設定しています。取得率は上がりましたが、それが当たり前になると、満足度調査の結果としては反映されないこともありますし、人の入れ替わりや引き継ぎなどで取れないとなると、不満になることもありますよ。

井上

もともと8割ぐらいの消化率で高かったので、それほどのインパクトはなかったということです。私は別の業種から来たので驚きでしたが(笑)。

荒瀬

中にいるとなかなかそれがわからないということもあって、当院の福利厚生は充実しているのですが、意外と知られていないので、ハンドブックを作ろうとしているところです。

黒木

看護部ではポケットサイズの手帳を入職時に配布しているのですが、やっぱり必要としないとなかなか見ないんですよね。

荒瀬 浩之 氏、黒木 雅代 氏、井上 和彦 氏02

井上

事業所内保育園があったり、専門職の方がそれぞれの協会に個人で入る際には半額支援があったりと、他と比べても待遇は良いと思うんですよ。最近は、健康づくりの部活動も支援しています。

荒瀬

就職説明会等では、いいアピールポイントになっていると思いますよ。

ちょっとした施設の修繕などは、すぐ対応できるのですが、まだ始まったばかりですので、中長期的な取り組みはこれからというところです。

黒木

短時間正職という制度もあるので、復職時に相談して勤務時間を決めるようにしています。ただ、忙しい現場ですから、周りの目が気になって、制度を利用するのに躊躇したり、心が折れたりする人もいます。あまり気を遣わずに、気軽に制度を利用できるような風土にしていきたいと思いますね。

家族が病気だとか、介護については、ほぼ申し出通りに長期休暇を取得することができていますので、徐々に浸透しているのかなと。施設基準が厳しいので、病棟間の手伝いも全部記録しないといけないという手続きもあり、なかなか融通が利かない部分もあります。

これからの目標は?

荒瀬 浩之 氏、黒木 雅代 氏、井上 和彦 氏03

井上

時間外労働をゼロにして、有給消化率を100%にしたときに、病院の経営が成り立つようにしていきたいというのが、事務方としての究極の目標です。

荒瀬

現場の「働きやすさ」はもちろん大事ですが、これからは「働きがい」も重視していけると良いなと思っています。

黒木

退職者を出さないというのが目標です。新卒で入った人たちの定着率は良いのですが、中途や高齢者の離職は解決が難しいです。医療はやりがいのある仕事ですので、働ける限りは働いてほしいですし、戻ってきやすい職場環境にしていきたいですね!

働き方改革モデルの図
働き方改革モデルの図

和田病院

医療法人 誠和会 和田病院

所在地:〒883-0051 日向市向江町1丁目196-1
電話:0982-52-0011
URLhttps://wada-hosp.or.jp/
病床数:410床(一般406床・感染症4床)
診療科目:外科、脳神経外科、内科、消化器内科、放射線科、リハビリテーション科

昭和24年より民間病院でありながら、24時間対応の急性期医療に取り組む。昭和27年、県の支援により医療法人となる。昭和62年に現在の向江町に移転、150床に増床し、脳神経外科診療を開始。急性期・慢性期の医療、癌、生活習慣病の検査、透析にも対応。介護老人保健施設を併設し、療養病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟も開設。
「標準をしっかり守る医療・福祉」をモットーとして、日向市近郊のおよそ87,000人の医療圏において、地域密着型の医療を展開。県北の救急・急性医療を支援するため3次医療機関との連携も強化。また、地域包括ケアの拠点として、患者の生活支援にも積極的に取り組んでいる。

和田病院

医療法人 誠和会 和田病院

所在地:〒883-0051 日向市向江町1丁目196-1
電話:0982-52-0011
URLhttps://wada-hosp.or.jp/
病床数:410床(一般406床・感染症4床)
診療科目:外科、脳神経外科、内科、消化器内科、放射線科、リハビリテーション科

昭和24年より民間病院でありながら、24時間対応の急性期医療に取り組む。昭和27年、県の支援により医療法人となる。昭和62年に現在の向江町に移転、150床に増床し、脳神経外科診療を開始。急性期・慢性期の医療、癌、生活習慣病の検査、透析にも対応。介護老人保健施設を併設し、療養病棟、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟も開設。
「標準をしっかり守る医療・福祉」をモットーとして、日向市近郊のおよそ87,000人の医療圏において、地域密着型の医療を展開。県北の救急・急性医療を支援するため3次医療機関との連携も強化。また、地域包括ケアの拠点として、患者の生活支援にも積極的に取り組んでいる。

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宮崎県地域医療支援機構(事務局:宮崎県医療政策課)
〒880-8501 宮崎県宮崎市橘通東二丁目10番1号 TEL 0985-26-7451
ishishohei@pref.miyazaki.lg.jp