医師になろうと思ったきっかけを教えてください。
きっかけは祖父の入院です。私が小学1年生のとき、祖父母の家に遊びに行っていた際、目の前で祖父が救急搬送されました。その後、血液透析が必要と診断され約5年間の闘病生活の末、他界しました。とても優しく、大好きな祖父でした。お見舞いを重ねるうちに、「自分が医師になって祖父を助けたい」と子ども心に強く思うようになりました。
その後、医学部に合格したときも、医師国家試験に合格したときも、真っ先に祖父のことが思い浮かびました。私がこの職業を志すきっかけを与えてくれた祖父に、今も心から感謝しています。
自治医科大学を卒業して感じる、自治医科大学の魅力は何だと思いますか?
様々な”つながり”です。
1つ目は横のつながりです。自治医科大学は各都道府県から毎年2~3名の入学者を受け入れており、全国に同級生がいます。全国にネットワークがあるという環境は頼もしいものです。
2つ目は縦のつながりです。自治医科大学を卒業して宮崎県の医療に寄与された先輩方、そして今後担っていく後輩たちとのつながりがあります。様々な臨床や進路の相談を相互にできる関係性でたいへん頼りになります。
そして3つ目が地域・行政とのつながりです。地域医療の実践の中で地域住民とのつながりはもちろんのこと、他の大学では経験が難しい行政関係者とのやりとりで、病院内の臨床に加えて地域全体を俯瞰的にみつめる目が養われると感じます。
現在の診療科を選択されたのはなぜですか?
私は総合診療科を選択しました。
総合診療科の説明は難しいのですが、”患者さんをまるごとみる医者”というイメージでしょうか。”まるごと”というのはどんな病気でもという意味もありますが、それ以上にその患者さんが育ってきた環境や家族・経済状況などの社会的背景、そして病気に対してどう感じてどのように考えているのか、その人にとって重要な価値観は何かといった心理的背景も踏まえての診療を心がけることです。患者さんの人生における医療の場面で、その人にとっての最善をサポートできる診療科だと思います。
多くの住民が医師に期待しているのは身近にいて相談しやすく、いざ不調になったときに対処してくれる、そんな医師ではないかと思います。そのような医師を目指して、総合診療科を選択しました。
これまでのへき地での勤務を通じて、地域医療のやりがいや魅力は何だと感じますか?
臨床でいえば多種多様な疾患や患者さんに出会えること、その患者さんのマネジメントを主導できることです。その地域に一つしかない医療機関で働くことが多いので、急性疾患から慢性疾患、子どもから高齢者、重症から軽症などあらゆる症例に対応します。そして病院での診療だけでなく、介護や家族、職場や学校など患者さんの生活をまるごとみやすい環境です。患者さんの健康に関して多面的な理解をすることで、病院だけでは治せない病気に対応することも可能となります。
臨床以外では、へき地は病院や自治体の組織の規模が大きすぎないため、職員一人ひとりの意見が反映されやすく、企画や業務改善にも主体的に関わりやすいという特徴があります。医師という専門職として他の職種と協力しながら、地域の健康に寄与できる点も魅力だと感じています。
休日はどのように過ごされていますか?
家族とゆっくりした時間を過ごすことが多いです。まだ子どもが小さいので家の近くを散歩したり、家の中で子どもとおもちゃや積み木で遊んでいます。
一人の時間があるときには、本を読んだり動画をみたり料理をしたりなど、基本的には家の中で過ごしていますね。勤務する病院によって休日の当番頻度は異なりますが、プライベートの時間は確保できています。
今後子どもが大きくなって夏休み休暇など連続した休日の際には、家族で遠出したり旅行して過ごせたらいいなと思いますね。
医師を目指して頑張っている方へ、メッセージをお願いします。
志を持って医師になるための準備をしている皆さん、日々の勉強や実習の中で、不安や挫折を感じる瞬間は少なくないと思います。しかしそれらは、成長の証です。知識や技術を磨くことはもちろん重要ですが、医師として本当に求められるのは、患者さんやご家族に寄り添う姿勢と、迷ったときに正しい道を選べる倫理観だと私は考えています。
何のために医師を目指しているのか、それを改めて自問してみて、やっぱり医師を目指すんだと強く思える方はぜひそのまま努力を続けてください。そんな皆さんと宮崎県で一緒に医療できる日を楽しみにしています。