コンピュータサイエンスから遺伝子まで幅広い興味を持ち分子生物学の道へ。
宮崎医科大学卒業後、都城での臨床の日々の中で、人とのふれあいや患者の気持ち、治療する喜びや達成感など新しい感覚にやりがいを見出す。心臓カテーテルが専門で、指導医として厳しくも温かく、研修医はもとよりスタッフからの信頼も厚い。看護師長に「ICUのプリンス」と言わしめる岩切医師に都城市郡医師会病院での臨床研修の魅力を語っていただきました。
宮崎大宮高等学校卒業後、1994年に宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)第一内科入局。
2000年5月~2005年3月、熊本中央病院 循環器科。
2005年4月~2007年11月、宮崎大学医学部附属病院 ティーチングアシスタント
2007年12月より都城市郡医師会病院 循環器科医長/ICU室長に就任。
宮崎大学の第一内科から派遣されていた小林先生と2人で循環器内科の立ち上げに携わることになり、当初はカテーテル室もなく救急中心でしたが、現在は循環器内科としての施設や設備はすべて整っています。カテーテル手術というのは画期的な医療の進歩だと思いますし、それがこの病院で年間300例を超え、県内でも有数の手術数を実施できることにやりがいを感じています。
PCI(Percutaneous Coronary Intervention:経皮的冠動脈インターベンション)も導入、人工心肺も挿入でき、狭心症の診断と治療など通常の循環器科と同レベルの医療が可能なのですが、循環器の患者さんに絞った医療を提供するだけではありません。
ここでは1次救急から2次救急、2・5次までは対応しますので、急性腎不全の患者さんも運ばれてきますし、重症肺炎の患者さんもいらっしゃいます。その合間を縫って、カテーテル検査や治療をこなしているというのが現状ですが、その分必然的に研修医も循環器内科の専門を学びながら、さまざまな症例に接することになります。
研修医の指導については、私が独自で編み出したというものではないのですが、自分が1年目2年目で受けた指導、あとは自分で失敗したこと、身をもって経験したことを主として伝えるというのを心がけています。あらかじめ用意されたカリキュラムやテキストなんかは一切ありません。現場で急患が運ばれてきて、そこでどういう対応を取るかという状況の中で学んでもらいたいのです。
新医師臨床研修制度が始まってからは、とにかく自分をプロモートして打ち出していかないと、食べていけないわけです。そうすると客観的に証明してくれる資格の取得に走りがちだったり、病院を選択する際にも、ここに立派な先生がいてこういう資格が取れるかもという理由で進路の選択をすることがあるかもしれません。
都城市郡医師会病院も日本循環器学会循環器専門施設にはなっていますが、資格取得だけを指導の目的としているわけではありません。研修医の先生たちがこの病院を希望するのは、実際に手術に携われるだとか、患者さんを受け持てるというのを期待してのことだと感じてます。
ただ、すべての研修医にそうさせてあげられるわけではありません。器用な人も不器用な人もいる、知識がある人も足りない人もいる、コミュニケーションが得意な人も苦手な人もいます。その適応能力を見分けるのが指導医として一番気を付けていることです。
みんなに同じ画一的な指導をしても身に付かないと思いますので、一人ひとりに合った研修を受けることができるのがこの病院のいいところではないでしょうか。また、隣に宿舎が準備してありますので、どっぷり医療の勉強に集中せざるを得ない。周りには何もないですから(笑)。
実際は救急も入ってくるなど先輩からの口コミで事前の情報を得て、それなりの覚悟をして来ている意識の高い研修医が多いですから、みんな頑張りますね。救急に特化した研修を行っているわけではないのですが、1次・2次の救急から、自分で最初の判断をして、入院の適用を決めて治療して、退院まで、その一連の流れを全部経験できるという特長があります。患者と病気とじっくり向き合って治療を考える、そこがここでの研修の魅力です。
もう一つの魅力は、親しみやすさですね。困ったときや悩んだ時には気軽に声を掛けあえるよう適度な距離感を持てる雰囲気を作ることを心掛けています。正しいコミュニケ―ションが取れるように研修医を導くのも指導の一環で、まずはあいさつからですね。ICUも一般病棟もスタッフのレベルが高く、優秀なので、彼らからも貪欲に吸収してほしいと思っています。
実際の研修期間は、1~2カ月と短いので、症例にせよ手技にせよ多くを網羅できるわけではありません。単に質問をしてきてもすぐに解答を与えるのではなく、調べ方を教えて「疑問を明日に持ち越すな」という合言葉で、自分で調べて考えることを習慣づけ、一人で困難にぶち当たった時にも対応できるようになることを目標にしています。
そして、研修医が自分の力で歩き始めると、もう僕らの力は要らないんです。その弾み車が回り始めるまでの勢いをつけてあげるのが私たちの仕事です。
今は選択肢が多く、なかなか腹を決められないまま、あっちに行っておけばよかった、楽だったかも…と頭によぎることがあるかもしれません。でもそんな気持ちではどこに行っても成功しません。ここだと思ったところで、一生懸命頑張ることです。
研修医インタビュー
(宮崎大学出身・研修医2年目)
3年目を迎えるにあたり自立しなければいけませんので、心電図の苦手意識を克服しようとファーストタッチの多い研修環境を、と都城市郡医師会病院を選びました。
心臓に主軸を置いていますが、救急にも入ります。岩切先生は、患者さんにもスタッフに対しても細やかな気配りのできる先生で、「患者さんとこういう風に接すると安心も信頼もしていただけるし、スタッフともこういう風に話すと一緒のチームとして治療しているという関係になれるよ。」とコミュニケーションを重視する指導です。技師の方も技術が高いので、機器の操作を教えていただくことも多いです。
将来は、患者さんとしっかりコミュニケーションがとれて、全身をつなげて診れる医師になりたいと思っています。