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救命救急センター

プロフィール
ドクターヘリで現場に急行するフライトドクターとフライトナース、安全な飛行と正確な判断を求められるCS、パイロット、整備士からなる運航管理室、そして救急医療とケアにあたる救命救急センターの医師と看護師。
彼らのチームワークなくして、宮崎の救急医療の未来はない。
今年4月に立ち上がったばかりの救命救急センター。約3ヶ月(4月18日~8月31日)で宮崎県内全域から105件の救急搬送を受け入れている救急医療の最後の砦。『For MIYAZAKI』の合言葉を全員で背負い、いまだ「産みの苦しみの途中」という艱難辛苦の中、命の現場に向き合うスタッフたちの覚悟と信念の物語がここにある。

For MIYAZAKI

Introduction

カンファレンスルームにホットラインのコールが鳴り響く。出動要請だ。

ドクターはすぐさま受話器を取り、救急隊から患者の容態と現場の状況の報告を受ける。同時に運航管理室ではCS(*1)が現場の正確な位置と近くの拠点病院の地理情報を確認し出動の検討を始める。ドクターの出動指示で、5分も経たずに基地病院を離陸、現場に急行する。15分圏内で県央と県南をカバー、30分圏内で県北も含めた宮崎県全域と熊本・鹿児島の一部まで到着が可能だ。

ランデブーポイント(*2)に降り立つドクターとナース、すぐさま救命処置を開始。救急隊の救急救命士の応急処置も正確だ。ドクターが容態や搬送手段を瞬時に判断して、もっとも短時間で処置の可能な搬送先に運ぶ。

基地病院まで搬送された患者には、救急医が治療に当たる。ときには臓器別専門医や看護師ともディスカッションしながら、命を救うベストの判断が求められる救急医療の現場。そこには、それぞれのスタッフの冷静な判断の融合と、命を救うことへの熱い思いが満ちていた。

(*1) CS … コミュニケーション・スペシャリスト。ドクターの出動判断に応じて天候および地理情報をパイロットと共有し、救急隊との最も適切な合流位置を精査して指示を出す地上班。
(*2)ランデブーポイント … ヘリコプターが着陸できる拠点病院や消防本部の他、運動公園グラウンドや学校の校庭などが指定されている。

For MIYAZAKI

フライトドクター 白尾 英仁 氏 Shirao Hidehito

白尾 英仁 氏

▲自治医科大学出身。
10年以上を県北でへき地医療に携わってきた経験をふまえて救急医療へ。総合的な医療をフィールドとし続ける、14年目のドクター。

今、宮崎県全体を見渡したときに、現場で何が一番困っているか、救急医療、特に時間外の診療についてお願いできるところ、相談できる医療体制がなく、手詰まりの状況に陥ることがありました。へき地医療と救急医療は通じるところが多く、来た人を全部診る、診断して次の病院に送るなど、常に総合医としての判断が求められる現場なんです。

どの現場からも24時間365日受け入れ可能なバックアップ医療体制を築くというのが、このセンターの使命ですし、その中で私は、患者さんの受け入れから送り出しまで、あるいは行政との調整など、あらゆるレベルでのコーディネートを行うという役目を担っていきたいと思っています。医療体制自体も宮崎県全体で完結できればいい、さらには九州全体で病院同士が連携できれば救える命はもっと増えるはずです。

フライトドクター 今井 光一 氏 Imai Kouichi

今井 光一 氏

▲東京都出身、日本大学医学部卒業。

病理から臨床へ、患者さんを診ることと、ワークライフバランスを求めてサーフィンのできる宮崎へ移住。救命救急センターの中心スタッフとしてフル回転の日々を送っている。

まだここが救命救急センターではなく救急部だった頃、呼吸器内科からのお手伝いとして入っていたのですが、当時の当直は、ほぼ一人で全てをマネジメントしていました。患者を受けた時は、看護師をオペ室から急遽呼んでくる、というような状況でした。専属ナースすらいなかったんです。それが救命救急センター設立の話が出てきて、ドクターヘリの導入も決まり、この2年で一気に体制が整いつつあります。

まだまだ宮崎の救急医療は発展途上にあり、ドクターヘリという強力な設備は持ったけれど、全国に比べて立ち後れている部分があります。ドクターの数が足りてないので、忙しい日々を過ごしていますが、何よりもみんなで一つの目標に向かっているという楽しさがあります。厳しい状況でも前を見て、進むことは、自分の性に合っていると思っています。

For MIYAZAKI

運航管理室CS 日高 克久 氏 Hidaka Katsuhisa

日高 克久 氏

▲時間との勝負である救命救急の現場において、ドクターヘリの運行を管理するCS(コミュニケーション・スペシャリスト)。
搬送可能なポイントやルートを導きだし、基地病院から操縦士にアドバイスを送る。

ホットラインで出動要請が入ります。ドクターが応対しているのを、ここ運航管理室でも同時に聞きながら、即座に現状の把握に努め、天候や風向き、現場の地理を速やかに調べて、ドクターとパイロットに伝えます。

先日CSの審査に合格したばかりで、まだ新人ではあるのですが、かつては主に報道取材のヘリコプターに搭乗していて、事故現場や災害現場を客観的に伝える立場から、実際に人の命を助けるために働いているというように関わり方が大きく変わり、あらためてやりがいのある仕事だと感じています。

操縦士 中村 浩二 氏 Nakamura Kouji

中村 浩二 氏

▲ドクターヘリの操縦士。
ランデブーポイントにフライトドクターとフライトナースを運び、救命処置した患者を受け入れ可能な病院に安全に短時間で運ぶのが最大の使命。

事故の第一報のホットラインや無線も聞いていますので、出動があるかどうかは分かるのですが、やはりCS室からの出動の連絡電話が鳴ると緊張が走ります。救急隊員から伝えられる現場の状況も次々と変わるので、現場上空からドクターの判断のもと対応する場合もあります。

日頃、一番気になるのは天候で、雨が降ると視界不良で飛べない、と苦渋の判断をすることもあります。私たちが直接医療行為をするわけではないですが、搬送された患者さんが助かった、回復したと聞いた時、何よりもほっとします。

整備士 緒方 弘和 氏 Ogata Hirokazu

緒方 弘和 氏

▲毎朝、ドクターヘリの装備品と運航のための準備をする整備士。
CSと操縦士と常時3人でチームを組んで、日々の安全な運行を実現している。

福岡でも10年ほど、導入時からドクターヘリの運航に携わってきました。宮崎の救命救急センターでは、パイロット、整備士、ドクターが1人か2人、ナースがついて、最大5人のチームで搭乗しています。

整備の仕事がメインですが、ナビゲーションや無線連絡までパイロットをフォローするのも私の仕事です。現場もCSもヘリも同じ地図を持ってお互いに連絡を取っているのでやりとりがスムーズに行えます。実際に現場に急行して目の前で命を救うドクターのサポートができるということに仕事の充実感がありますね。

For MIYAZAKI

看護師長 長﨑 玲子 氏 Nagasaki Reiko

長﨑 玲子 氏

▲救命救急センター42人のナースを束ねる看護師長。
ICU10年の経験を生かし、ナースとして命の現場の重責を担う。管理者としてスタッフ教育と環境づくりを推進する、強く美しいベテランナース。

救命救急センターができドクターヘリが飛ぶようになって、今まで救えなかった命が一人でも二人でも救えるようになってきたと実感しています。そして大学病院だけではなくて、現場でヘリを待つ側でも、救急隊員や役場の人たちが砂が吹き上がらないように地面に水をまいていたりと、地域の皆さんと一緒になって宮崎の救急医療を作り上げています。

このセンターは、まったくゼロからのスタートで、今後さらにもっと質を上げていかなければいけません。ドクターもナースも、他病院での救急の研修やHEM-netなど積極的に参加してスキルを高めているところですが、同時に、何よりも人としての心の持ちようを重視して、患者さんやご家族の気持ちに寄り添う、そんなナースを育てていきたいと思っています。

フライトナース 日吉 麻紀 氏 Hiyoshi Maki

日吉 麻紀 氏

▲諸塚村出身。
JR福知山線脱線事故の拠点病院であった兵庫医科大学の救命救急センターで100人以上の負傷者への対応に当った経験を持つ。明るいキャラクターでチームを和ます空駆けるナース。

要請が入るとすぐに、薬や医療資材の入ったバッグを担いでヘリに乗り込みます。2年間、導入準備段階から研修も受けてきましたが、現場では研修と違うことも多く、特に宮崎は山だらけで、近くまで行かないと現場からの無線が届かず患者さんの状況が分からないなど、準備できる備品は持てるだけ持っていかなければなりません。

いつも心掛けているのは、スタッフや家族の方に生の声と現場の状況を伝えること。現場に飛び、アンテナを張って、患者さんの目線からの情報を提供することで処置のスピードと正確性が上がります。これは今までになかった新しい体験で、毎日、誇りと医療バッグを持って現場に向かっています。

フライトナース 木下 俊太 氏 Kinoshita Shunta

木下 俊太 氏

▲20代半ばから看護師の勉強をして医療の道へ。
救命救急センターの設立準備に際し、自ら希望して脳外科から救急部へと転属。積極性といつも笑顔がモットーのフライトナース。

フライトは、ドクター1人・ナース1人という体制で現地に急行しますので、ドクターが処置に当っている間のサポートの他に、その場にいるご家族や同行者の方へのケアだったり、ときにはプライバシーの保護で、携帯やスマートフォンでの撮影をご遠慮いただいたりと、柔軟な対応を要求されます。救急隊の方にも協力をお願いしながら、現場のコーディネートに当たるのも役目の一つです。

その場でできる処置というのは限られていますので、ドクターとコミュニケーションをとって、いち早く適切な病院に搬送するかに患者さんの命が懸かっています。県内全域に必要とされていて、達成感とやりがいのある仕事です。

救命病棟ナース 川越 由紀 氏 Kawagoe Yuki

川越 由紀 氏

▲外科、ICU、手術部を経て、救急看護分野の認定看護師として、患者さんへのケアの実践、スタッフの指導とコンサルティングを中心に、救命救急センターのナースの統括と調整を司る。

救命救急センターができるに当たり、自ら希望して入りました。外科病棟にいた頃、病院外で心肺停止した人に心肺蘇生法を実施した経験をし、救える可能性があるならとずっと救命救急に関心を持っていました。

阪神淡路大震災が起きた時には、新人ナースだったため被災地に出向くことはできませんでした。その後災害看護について学び、東日本大震災時には石巻、福島における救護活動に参加しました。救急看護認定看護師として本格的に勉強を始めてからは関わる怖さとともにやりがいを感じています。

救命救急センターは入院時よりメディカルソーシャルワーカーと連携し、転院調整や様々な社会的背景のある患者さんへの対応を行い、常に救急患者の受け入れができるようチームで取り組んでいます。短期間ながらも救命救急センターで元気になっていく患者さんやご家族の喜ぶ顔をみるのが何よりも幸せです。

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宮崎県地域医療支援機構(事務局:宮崎県医療政策課)
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