宮崎県の臨床研修環境の特長として、基幹型研修病院だけではなく、協力型研修病院の指導内容の充実ぶりが挙げられる。現在、宮崎大学医学部附属病院における臨床研修の主流となっている「自主デザイン研修プログラム」では、15か月の必修科目の研修後、残りの9か月は研修医の自由な裁量で研修先を決めることができる。
宮崎大学医学部附属病院とは違った、特色ある専門性の高い病院や診療所でのメンターとの偶然の出会いが、研修医のその後の医師人生に大きな影響を与えるといっても過言ではない。
市中病院の臨床の最前線で働く医師と、現場に出たばかりの初期研修医。そこには、幸せな出会いが生まれていた。
なかむら ただし
1986年、宮崎医科大学(現・宮崎大学医学部)卒業。麻酔科医として、宮崎大学医学部附属病院、県立宮崎病院、兵庫県の市立川西病院を経て、1997年、アメリカのハーバード大学の関連病院のブリガム・アンド・ウイメンズ病院にて研究職。1999年宮崎大学に戻り、2004年に潤和会記念病院麻酔科に入職。「麻酔科研修プログラム」の教育担当責任者として研修医ひとりひとりの特性に合わせた、テーラーメイドの研修を展開中。
■資格:日本麻酔科学会指導医
■所属学会:日本麻酔科学会
医学部で学ぶ内容は全て面白かったですし、どの診療科目も好きだったのですが、最終的に麻酔科医を選んだ理由は、絶対に手術に必要な人材だと気が付いたからです。
卒業後は、宮崎大学医学部附属病院の内科に入局しました。内科は臨床医学の王道ですから、医師も多く私には少し窮屈な感じがしました。私が偏屈なんでしょうね。そんな時、宮崎では中心部でも麻酔科医が足りないために、患者さんが手術を待たざるを得ないということを知りました。麻酔科は当時比較的新しい領域でもありましたし、宮崎で医師をするなら医師の足りない分野に行こうと考え、鞍替えした次第です。
基本的に、朝9時から夕方4時ぐらいまでは、手術室で麻酔を行っています。手術が終わるまで離れることはないので、大きな手術では、丸一日手術室に居ることもあります。ずいぶん昔の話にはなりますが、今までで一番長かったのは、心臓血管の外科手術で30時間ということもありました。
医師としての自分のモットーは「弱者に寄りそう」ということです。手術中の患者さんは意識がないまま、自分の生命を他人に預けている状態ですから、術中管理には、それなりの覚悟と準備をしておきたいですよね。
潤和会記念病院は、もともとリハビリに強い病院で、脳卒中や神経疾患を抱えている患者さんに対する知見や経験値の蓄積があるというのが大きいですね。手術件数でいえば、脳外科はもちろん、今は外科や内視鏡の手術も多くなり、過去に脳卒中をおこした患者さんの脳外科以外の手術にも対応できるというところが、最大の利点になっています。
現在、脳外科・外科・神経内科・麻酔科・救急集中治療科の5つの診療科で、年間十数人の研修医を受け入れていて、そのうち麻酔科研修が8~9割です。研修期間は、それぞれ2~3カ月の選択制で、5人の指導医が、日によってローテーションしながら、マンツーマンでの指導が受けられるようになっています。常に若手がいるというのは、受け入れる病院の方にも活気が生まれて良いですね。
指導方針としては、「臨床医学は、自然科学と人文科学を基礎とする、科学のほんの一部の領域にすぎないことを自覚してもらう」ということです。指導医相手であれば専門用語でごまかせますが、患者さんや患者さんの家族に分かるように説明するためには、自分自身で理解しておかないと伝えられません。研修の初日に、「あなたが病気になったときに、主治医があなたのコピーだったらどう?」と聞くと、大抵困った顔になるのですが、そこで困ってもらってはこちらが困ります。(笑)
日中は指導医について手術に入りますが、「こうすべき、ああすべきだ。」とか、「こうやれ、ああやれ。」という指導はしていません。基本的な手技と知識は教えますが、「こうした方が良いんじゃないか。」と考えることの方が大事で、研修医自らが自然に方法を模索し始めるまで待ちます。自分が理解できるまで探求する姿勢を身に付けてほしいです。
もう一つの指導のポイントは、「患者さんに寄り添うのを忘れない」ということです。手術前後には、患者さんの症状や既往歴、合併症の評価を行います。まずは手術ができる状態かどうかから、手術中や手術後に気を付けなければいけないことまでを話し合います。患者さんは自分の親や祖父母の世代のことも多いですから、その方の人格や人生を尊重してお話しできるようになることが医師として必要なことだと思います。
潤和会記念病院を研修先に選んだ理由は?
福永
僕は、地元清武の出身で岡山の大学に行っていたのですが、就職というか研修で宮崎に戻ってきました。研修プログラムを組む際に、先輩方の評判を聞いて、自分の精神を鍛えたくて、こちらを選びました。
堀之内
宮崎大学医学部附属病院の自主デザイン研修プログラムは選択の幅が広く、市中病院も選べ、1カ月単位で設計できるのですが、潤和会記念病院での研修を体験した先輩たちから、勉強になるよという話は伺っていて、麻酔科の全身管理を学ぶなら、ということで研修先に選びました。中村先生は博識で、医学のことも医学以外のことも詳しくて、人間的にも広いなという印象です。
徳田
私も、医師としての精神面や心構えを叩き込まれるよと先輩たちから聞いて、こちらを選びました。私はもともと栄養士になろうと思って県外で学んでいたのですが、実習の中で、栄養指導をするにしても、ひとつひとつ医師の診断ありきで、それだったら自分で決められる医師になろうと思って、Uターンして医学部に入り直しました。
研修に入ってみての感想は?
堀之内
一日の流れとしては、朝に前日の術後診察をして、その日のオペの準備をします。夕方は翌日以降のオペの準備ですね。まだ慌てることが多くて、これまでの自分は勉強不足だったな、というのを実感しています。
福永
自分の熱量に手技のレベルが追い付いていないというのが悩みですね。ルートをとったり、エア抜きをしたりという基本的な手技でも、研修で実際にやってみると、結構抜けていたところがあったな、と反省することが多いです。3年目で入局する前の、今のうちにいろいろ聞けて良かったと思います。
徳田
手技もですが、薬の使い方って、なかなか教科書開いて勉強することがないので、勉強の仕方を教わったというのが私としては、大きかったです。
中村
指導する側にとって、今までの知識を教えることは簡単なのですが、それっていずれ古くなるものですよね。これから新しいものが出てきたときに対応できないと困るので、私は研修医に安易に結果を求めないんです。どうせ技術も下手なんですから(笑)。手技は経験した分だけ上手になりますから心配いりません。
今は、結果を求められることが多いので、すぐに正しい答えを出したがります。「それって本当に必要なのか?」とか「この人の言っていることは本当なのか?」と、あまり物分かりが良くならなくていいので、自分で考え、学んでいく力をつけてほしいと思っています。世の中、正解のないことのほうが多いですからね。
宮崎での研修環境の一つとして選択肢を増やすことはできているのかなと思います。彼らもいずれ指導する立場になっていくので、「桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す」という言葉を贈りたいと思います。モモやスモモは、成長して美味しい実をつけるから、その下に人が集まってくるという意味ですが、そういう人間になってほしいなと。自分がそうありたいという願望も含まれてますけどね。
宮崎での研修環境の一つとして選択肢を増やすことはできているのかなと思います。彼らもいずれ指導する立場になっていくので、「桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す」という言葉を贈りたいと思います。モモやスモモは、成長して美味しい実をつけるから、その下に人が集まってくるという意味ですが、そういう人間になってほしいなと。自分がそうありたいという願望も含まれてますけどね。
潤和会記念病院
所在地:〒880-2112 宮崎県宮崎市大字小松1119
電話:0985-47-5555
URL:http://www.junwakai.com/
病床数:446床
診療科目:内科、呼吸器内科、神経内科、糖尿病・代謝内科、消化器内科、内視鏡内科、外科、消化器外科、肛門外科、腫瘍外科、乳線外科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、麻酔科、ペインクリニック内科、ペインクリニック外科、放射線診断科、放射線治療科、リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、眼科、病理診断科、循環器内科
潤和会記念病院
所在地:〒880-2112 宮崎県宮崎市大字小松1119
電話:0985-47-5555
URL:http://www.junwakai.com/
病床数:446床
診療科目:内科、呼吸器内科、神経内科、糖尿病・代謝内科、消化器内科、内視鏡内科、外科、消化器外科、肛門外科、腫瘍外科、乳線外科、脳神経外科、整形外科、泌尿器科、麻酔科、ペインクリニック内科、ペインクリニック外科、放射線診断科、放射線治療科、リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、眼科、病理診断科、循環器内科