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寺尾 公成 氏

プロフィール

寺尾 公成(てらお きみなり)/門川町出身。1983年、熊本大学医学部卒業。
同大学院で組織学の基礎研究に従事した後、開業医である父と同じ産婦人科医の道へ。1989年に県立延岡病院へ着任し、以来26年、産婦人科医として勤務。婦人科腫瘍部門(子宮腫瘍・卵巣腫瘍など)の専門で、産婦人科手術全般を担当。快活なキャラクターと熱意ある指導が研修医に人気。

医療連携のモデルケースは延岡から
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若かりし日の寺尾医師が、県立延岡病院に着任した当時、驚いたことが二つあったという。一つは病院施設の老朽化。クモの巣の張っている病室、廊下でネズミが走る姿を見かけることもしばしばで、医師の数も少なく、スタッフも足りていなかった。しかし、もう一つのポジティブな面での驚きは、県病院の医師たちと地域の産婦人科開業医たちとのネットワークだった。

もともと十数名しかいない県北地域の産婦人科医だが、毎月1回、一堂に会して、勉強したり会食したりと日頃から交流を深めている。月末に行われることから二八(ニハチ)会と名づけられたその会合は、昭和20年代から今でも受け継がれていて、延岡市、日向・入郷地区、高千穂町あたりからもほぼ全員が駆けつけるほどの団結ぶりだ。

「いわゆる飲みニケーションってやつですが、他の科がうらやむくらい、開業医の先生方と県病院との関係が良いんです。今でこそ、地域包括ケアや地域医療連携などといわれていますが、ここでは当時から産婦人科医同士の連携が当たり前だったんです。正常なお産は開業医の先生たちで診て、これはいかんと思ったら県病院に送ってくれ、と。」

宮崎大学医学部附属病院を最後の砦として、宮崎県全体で周産期医療の1次2次3次体制を整える中で、モデルケースとなっていたのが、実はこの県北の産婦人科医の連携であった。お互いに顔を知っている仲だから頼みやすいというのも人情のなせる業だろう。

「和気あいあいとやりながらも救命率は高いし、開業医の先生方との垣根もないので、24時間365日いつでも受け入れるという体制が出来ていると自負しています。また、元気になったら地元のお医者さんのところに戻すことで7床のNICUを確保しつつ、新生児に関しては、ほぼ地域完結型を実現できています。網膜症など特殊な治療の場合は大学病院へ応援を要請したり、ドクターヘリ搬送もできるようになりました。今後タイアップして人材交流も進められればと思っています。」

県立延岡病院での研修の特長

延岡市では、平成21年より市町村では全国初の「地域医療を守る条例」を制定し、市民と医療機関と行政が一体となって、保健・医療・福祉の連携を推進している。

「それまでは、医師が集まってこないことに加え、ようやく呼んできても別の人が辞めてしまう、その繰り返しでしたね。脳梗塞の神経内科や吐血・下血などの消化器内科の救急は、輪番制にせざるを得ませんでした。」

かつては60名以上が在籍していた県立延岡病院だが、現在、正規の医師は55名。マンパワー不足は否めず、閉じた診療科もある。地域医療における医師不足と診療科の偏在、医師の高齢化という問題は、深刻な状況ではあるものの、休診科については延岡市医師会の協力で輪番制を導入し、地域住民へ健康増進の啓発に努めるとともに、かかりつけ医への適正受診を推進し、医療機関の負担軽減を少しずつ実現してきた。

地域の救急総合病院としての在り方
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「地域から求められているのは、やはり救急医療になります。すべての診療科に関わってくるので、救命救急センターを核として、心臓血管センター、脳神経センター、消化器センター、周産期センターを設置しています。救急が中心となることで、各科の連携をスムーズにし、内科も外科も一緒になって、お互いをカバーしています。」

平成16年4月からの新医師臨床研修制度の開始から、熊大と宮大の協力型として臨床研修に携わってはいたが、やってくる研修医の数は多くなかった。平成22年より副院長として研修プログラム担当になり、研修医獲得に向け、事務局と一体となって積極的にPR活動を始めた。救命救急センターの体制が整ったこともあり、救急をメインに、4つのセンターで現場の最前線で働く医師を育てたいとの思いを強くした。

「循環器内科に関しては、心臓カテーテルの手術数も多く、救命率も高い。その分患者さんが多いということでもありますが、研修医の修得ニーズが高い分野ですし、この病院で得られるものは多いと思いますよ。周産期についても長年の経験がありますので、十分な実績とデータが揃っています。」

県立延岡病院の研修は、『縦連携』『横連携』『OJT』の3つのキーワードに集約されている。

『縦連携』とは、指導医とのコミュニケーション強化策で、日中ローテートしている診療科とは別に、夜間・休日の救急当直を研修医が週に1〜2回担当する制度を設けている。日中とは違う内科や外科の上級医とタッグを組んで、1年目から当直時の対応や疑問点の解消など、救急医療の現場では診療科の垣根を越えて取り組むものという意識を徹底し、いろいろな診療科の医師と交流するのを目的としている。当直という密な環境下で、指導医との距離が近いので、技術的な相談やメンタル面のケアにも気軽に応じられる体制を整えている。

『横連携』とは、研修医同士の関係づくりであり、同じ研修医でも、宮崎大学や熊本大学の協力型や、県立3病院をローテートするフェニックスプログラムの研修医、そして基幹型初期研修医として延岡病院に所属している4者が同じ研修医室で机を並べ、切磋琢磨する状況を作っている。所属は違えど、自然に親睦を深め、将来にわたっての仲間を得ることができるのもメリットの一つとしている。

孤立することなく安心して学び、着実に力を付けられる
研修の特長イメージ

『Off-the-Job Training』として、各診療科のベテラン医師の講義や救急セミナー、院内学会で病院で働く様々な職種が一堂に会しての情報共有、縫合コンテストなど臨床以外でも、研修医向けのイベントを用意している。机上の学習と臨床での体験を繰り返すことで短期間でのレベルアップを図っている。 BLS(一次救命処置)やACLS(二次心肺蘇生法)の資格取得の推奨もその一環となっている。

研修の最大の特長は、やはり当直と救急であり、CPA、意識障害、心筋梗塞、心不全、大動脈解離、脳卒中、呼吸不全、急性腹症、重症感染症、交通外傷、小児救急など、ほとんどの疾患から、ウォークインの患者まで、幅広いケースと症例に直接取り組む環境がある。

上級医の指導のもとに、研修医がファーストコンタクトをし、問診・診察・検査・評価・治療までの流れを自ら考え、フィードバックされることで、臨床医としての力を着実に身に付けることをモットーとしている。常に指導医が付いているので、患者にとってのデメリットもなく、研修医も孤立することなく安心して学べるのが、大きなメリットとなっている。

Off-the job Traning

出会いの街・延岡

「高校の先生方に話を聞くと、医学部への進学や看護職への就職者も増えているみたいです。」

かつて医療崩壊が叫ばれた地域ではあるが、それだけに住民の医療への関心も高い。2カ月に1回の県民公開講座には、毎回50人から100人ぐらいの参加者が集まり、リタイヤ世代に病院ボランティアを依頼したり、高校生の病院見学の受け入れなど、地域住民との交流にも積極的に取り組んでいる。今年の夏はハンガリーの大学からの留学生も受入れ国際化も進んでいる。

寺尾氏と研修医

「臨床医も、基礎研究をする人も、公衆衛生医師も、最初の2年間で救急を学び瞬時の判断力を鍛え、それを礎にしたうえで、サブスペシャリティの専門領域を身に付けて行くというキャリアが理想です。Rookie Hospital inNobeoka. ぜひ延岡から全国に羽ばたいていって、いつかこの地に戻ってきてほしいですね。」

先輩医師との巡り合い、同世代の仲間と肩を並べ、患者さんとの出会いも大事にする。日本神話の木花咲耶姫(このはなさくやひめ)と瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が初めて出会った場所が愛宕山。ここ延岡を『出会いの街』として医師としての第一歩をスタートする場所にして行きたいと語る。

「医療はサイエンスです。患者さんを助けるためにはルールがある。でも対象はあくまで人なんです。サイエンスとして理路整然とした側面と、ハートフルなマインドが合体して成り立つのが医療です。」

最後に先生にとっての医療とは?

理路整然とした「サイエンス」と情熱あふれる「ハート」の融合 宮崎県立延岡病院 副院長 臨床研修管理委員長 寺尾 公成氏

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