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谷口 正次 氏

二階病棟を歩いて食堂へ― ふと、ひまわりの絵の前で足を止める谷口医師。

「この絵を毎日のように見ているんです。十四年前にスキルス胃癌で亡くなった二十代の患者さんのご家族の方が持ってこられた絵で、患者さん本人も頑張ったし、手術後に結婚されたご主人やご家族のこともいまだに心に残っています。」

一人の医師の心の中に深く佇んでいる想いと、未来への希望と決意。臨床研修の指導医から、卒後研修を控える医学生への暖かいメッセージです。

昭和55年、徳島大学医学部卒業。

外科学会指導医・消化器外科学会指導医・消化器病学会指導医・消化器内視鏡学会指導医・麻酔科標榜医・がん治療認定医制度暫定教育医・内視鏡外科学会技術認定取得

古賀総合病院の研修の特色とは

総合病院ですので、多様な患者さんを診ることができます。紹介のない初診が50%で、そこに診断をつけていくという基本から、手術や薬物治療などの専門分野、緩和ケアから看取りまで一連の診療を経験できます。各診療科間の垣根が低く、複数の疾患を抱えた患者さんに対してドクター同士が相談しながら診ていくチーム医療が特徴的ですね。ベテランの専門医が多いので、専門的なこともしっかり指導します。昨年から救急総合診療科を設け、初期研修はそこを中心に、各診療科の専門医のサポートを受けながら、力を入れていきたいと思っています。また、各専門分野の教育病院、教育関連施設でもあるため、それらの資格取得を目的とした後期研修(レジデント)制度も用意しています。

指導医として心掛けていることは?

なによりも患者さんを第一にという考え方を伝えています。もちろん技術の習得は早いうちが良いですし、研修医それぞれの習熟度や個性に合わせて調整はするのですが、共通して指導しているのは、手技の面でも知識の面でも「予習」することです。いろいろなシミュレーターもありますので、内視鏡にせよ、気管内挿管にせよ、十分練習をしてもらいます。患者さんに勉強させてもらうということで成り立っているのですから、少しでも患者さんの不利益になるようなことがあってはいけないと考えています。

研修医の抱える不安や心配にはどのように対処していますか?

医療の厳しさだけでなく、医療の魅力とその喜びを教えることも大事だと考えています。すべての医療行為は患者さんのために行っていることですので、「回復してよかったね」「退院おめでとう」と、みんなで一緒に喜ぶ環境づくりを意識しています。長く医師を経験して慣れてくると、治った患者さんのことよりも、助けられなかった患者さんのことばかり忘れられなくなっていくのですけれど、医師になりたての研修医にとっては、達成感や成功体験が、医師を続けていく動機に繋がっていくと思います。

研修医が一人前の医師として自立するために必要なこととは?

やはり「情熱」だと思います。指導する側が研修医が学びたくなるような環境を作ることのみならず、研修医としても指導医が教えたくなるような研修医になることだと思います。この関係を生むのは、一生懸命さ、ひたむきさです。「誰かがどこかで見てくれているので頑張りなさい」ということはよく言います。来たばっかりで重症患者の担当になり、床に寝袋で泊り込んでいた研修医のことは今でも思い浮かびます。私も研修医時代の指導医の先生や仲間とは、生涯のつきあいで、30年経った今でも年に一度は集まっているんですよ。

医療に大切なことは?

患者さんやそのご家族との信頼関係の構築だと考えています。医療が提供できるのはプロセスで、患者さんとそのご家族が求められる結果と必ずしも同じになりません。このギャップを埋めるのが、インフォームドコンセントであり、患者さんの協力であり、そして医療の側のスキルアップです。患者さんに信頼される医療となるためには、真面目に診療し、解決策を真剣に考えるということに尽きます。的確に問題を拾い上げ、勉強し、手技を磨き、期待に応えられるように努力していかなければなりませんね。

自分を育ててくれる病院を自分で選び、情熱を持って、精一杯伸びていって欲しいです。学ぶチャンスは目の前にたくさんあります。

臨床の実践の場ですから、指導する側もあれをしなさい、これをしなさいということではなく、勉強の「仕方」を教えるという指導になります。実際は、これから病棟に入って分かることだとは思いますが、カルテも写真も、明日自分が担当する分だけでなく、制限なくいろいろ見て勉強することができるし、指導医の先生をつかまえて疑問点や実体験を聞ける絶好の環境なのですから、自ら動いて貪欲に吸収していってほしいと思っています。

漢詩に「病ありて治せず、つねに中医を得」という言葉があります。病気があっても、放っておけば、中くらいのお医者さんにかかっていると同じだということです(なだ いなだ「お医者さん」中公新書)。

医療行為は常に患者さんの病状を改善する目的で行われるものですが、時に思惑と異なる結果となることもあります。少しでも早く中医を越えて患者さんに役立つ診療・治療ができるようになる努力をするのが研修医に求められる姿勢です。その手伝いをするのが指導医ですが、主体は研修医です。自分自身の目標を明確にして、積極的に研修に望んでください。

最後に先生にとっての医療とは?

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